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Anglo Teck Copper Mine |
アングロ・アメリカン(Anglo American)とテック・リソーシズ(Teck Resources)による530億ドルの合併計画は、世界の銅市場を大きく再編する可能性を秘めています。アナリストの分析によると、この合併が実現すれば、2030年代初頭には両社の事業統合でチリのエスコンディーダ鉱山を抜き、世界最大の銅鉱山複合体となる見込みです。この巨大な銅事業の誕生は、鉱山業界でこの10年間で最大規模の取引となります。
チリの二大鉱山が連携、生産量100万トンへ
この合併の中心は、テック社のケブラダ・ブランカ(QB)鉱山とアングロ社のコラワシ鉱山の統合です。両鉱山を統合すると、年間約100万トンの銅を生産する複合体となります。これは単独鉱山の生産量として世界トップレベルです。特に、両鉱山を全長15kmのコンベアで結び、コラワシの高品位鉱石をQBの処理施設で活用する計画です。この連携により、単独で新たな鉱山を開発するよりも低コストかつ短期間で、年間17万5,000トンもの銅生産量増加が見込まれます。
合併の課題とシナジー効果
この大型合併には課題も存在します。テック社のQB鉱山は、これまでコスト超過や設備の不具合といった運営上の問題を抱えてきました。また、アングロ社はコラワシ鉱山を完全にコントロールしていません。グレンコア社をはじめとするパートナー企業が株式を保有しているためです。アナリストは、この複合体がエスコンディーダに匹敵する前に、QB鉱山の運営問題の解決が不可欠だと警告します。
一方で、合併によるシナジー効果は莫大です。両社は共同調達や運営効率化により、年間8億ドルの税引前シナジー効果を見込んでいます。さらに、ポートフォリオマネージャーのジョージ・チェベリー氏は、この数字は控えめだと評価します。なぜなら、この巨大複合体が持つ長期的な開発・拡張の可能性が、数字に反映されていないためです。
金属フォーカス 編集部コメント
アングロ・アメリカンとテック・リソーシズの合併は、単なる企業の統合ではありません。世界的な脱炭素化の流れで銅需要が高まる中、安定供給を確保するための戦略的な動きと捉えられます。巨大な銅鉱山複合体が誕生すれば、世界市場のパワーバランスを大きく変えるでしょう。投資家やメーカーは、この合併がもたらす市場への影響と、今後の銅価格動向を注意深く見守る必要があります。