中国・紫金鉱業、アルゼンチンでリチウム生産開始:南米市場の新興勢力

Zijin Mining Lithium


中国の大手鉱業企業である紫金鉱業(Zijin Mining)が、アルゼンチンでリチウム生産を開始しました。同社の現地子会社であるZijin-Liexは、カサブランカ州のトレス・ケブラダス(3Q)プロジェクトで炭酸リチウムの生産に着手しました。これにより、紫金鉱業は世界のEVバッテリーサプライチェーンにおいて、その存在感を大きく高めます。この新たなリチウム生産拠点の誕生は、南米の重要鉱物市場の勢力図を塗り替える可能性を秘めています。


塩湖プロジェクトで年間2万トンのリチウム生産へ

この3Qプロジェクトは、塩湖の鹹水を活用する事業です。プロジェクトの初期生産能力は、工業用炭酸リチウムで年間2万トンを見込んでいます。紫金鉱業は2022年上半期からこのプロジェクトを建設してきました。アルゼンチン政府のデータによると、3Qプロジェクトはアルゼンチンで7番目に商業的に稼働するリチウムプロジェクトです。アルゼンチンは、南米で最も多くのリチウム事業が稼働している国となりました。

3Qプロジェクトは、将来的な拡張フェーズを完了すると、生産能力が年間4万〜6万トンに達する見込みです。プロジェクトの炭酸リチウム換算埋蔵量は830万トンと推定されており、2043年まで採掘可能だと紫金鉱業は予測しています。


南米リチウム市場における地政学的競争

アルゼンチンは、ブラジル(3件)、チリ(2件)、ボリビア(1件)を大きく引き離し、南米で最多のリチウムプロジェクトが稼働しています。これは、アルゼンチンが世界のEV向けバッテリー産業における重要な供給国として台頭していることを示唆しています。特に、中国企業によるアルゼンチンでの積極的な投資は、南米における重要鉱物を巡る国際的な競争を激化させています。

中国の紫金鉱業がこのプロジェクトを成功させることで、今後、他の中国企業もアルゼンチンのリチウム資源開発にさらに参入する可能性があります。その結果、世界的なバッテリー産業における中国の影響力は一層強まるでしょう。


金属フォーカス 編集部コメント

紫金鉱業によるアルゼンチンでのリチウム生産開始は、世界のリチウム市場にとって大きな一歩です。特に、このプロジェクトが成功すれば、世界のリチウム供給における南米、そして中国のプレゼンスが飛躍的に高まります。EV市場の成長が続く中、安定供給を確保するための各国・各社の競争はさらに激化するでしょう。今後のアルゼンチンの政策動向や、他の企業の投資戦略が注視されます。


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