グローバル鉄鋼市場の再編:EUが輸入制限の新手法を提案する背景とは?

EC Restrict Steel Imports


欧州委員会(EC)は、域内鉄鋼産業の保護を目的に、新たな鉄鋼輸入制限手法を提案する方針を明らかにしました。ECのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、9月10日の年次一般教書演説でこの方針を表明。鉄鋼の保護措置が2026年6月に期限を迎えることから、新たな長期的な貿易手段を導入すると述べました。


世界的な過剰生産能力が脱炭素化投資の足かせに

世界的な鉄鋼の過剰生産能力は、欧州の鉄鋼メーカーの利益率を圧迫しています。この状況は、メーカーが環境負荷の低い製造方法へ移行するための投資を困難にしています。欧州議会でフォン・デア・ライエン委員長は、この過剰生産能力が、環境持続性にプレミアムを支払うインセンティブを奪っていると指摘しました。ECは公正な競争を歓迎しつつも、域内産業を不公正な競争から守る姿勢を明確にしています。


新たな鉄鋼輸入制限への道筋

フランス産業大臣は、7月下旬に新たなEUの包括的な鉄鋼輸入対策を提唱しました。この非公式文書は、11の加盟国から支持を得ています。提案の目的は、欧州鉄鋼産業の長期的な競争力を確保し、ECが設定した目標である85%に近い鉄鋼生産能力の稼働率を維持することです。提案は、現在の保護措置が期限切れとなる前に新システムの開発と提示を求めています。これにより、欧州市場のスムーズな移行と保護を目指します。今回のECによる新たな鉄鋼輸入制限提案は、この提言に沿った動きと見られます。


金属フォーカス 編集部コメント

EUの新たな鉄鋼輸入制限は、単なる貿易保護策に留まりません。鉄鋼業界が直面する脱炭素化という巨大な課題と密接に結びついています。世界的な過剰生産能力は、持続可能な投資を阻害する深刻な問題です。EUの今回の動きは、グリーン移行を加速させるための戦略的貿易政策として、今後各国の政策に波及する可能性を秘めています。


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