EU鉄鋼市場の新潮流:北欧州熱延コイル先物オプション取引が示す未来

Trasteel


スイスの鉄鋼商社Trasteelは、CME Groupの北欧州熱延コイル先物オプションで、過去最大となる6,000トンの取引を成立させました。同社は行使価格€625/t、プレミアム€26/tの12月限コールオプションを売却しました。この取引は、現物ポジションの価格変動リスクを回避するヘッジ戦略の一環です。EU鉄鋼市場における先物・オプション契約の利用が、より高度な段階に入ったことを示唆します。

この取引の背景には、いくつかの複合的な要因があります。第一に、CBAM(炭素国境調整メカニズム)や輸入クォータ変更を見据えた第四四半期の輸入増加です。第二に、フォワードカーブが順ざや(コンタンゴ)になっているため、先物市場でのヘッジが有利に機能しています。さらに、EUは既存のセーフガード措置に代わる、より厳格な新たな保護措置を導入する見通しです。これにはWTOルールに縛られない法的根拠が必要となります。


EU鉄鋼市場の新たな保護措置とヘッジ戦略

市場参加者の多くは、この新たな保護措置が先物価格にまだ十分に織り込まれていないと見ています。この見解は、価格上昇を見込んだ現物買い手の在庫積み増しを促しています。Eurofer(欧州鉄鋼産業連盟)は1月からの措置開始を希望しています。しかし、法的な手続きはさらに時間を要する可能性も指摘されます。この時間差が、市場に一定のリスクをもたらしています。今回のTrasteelによる北欧州熱延コイル先物オプション取引は、このような不確実性を背景にしたリスク管理の重要性を物語っています。


金属フォーカス 編集部コメント

今回の北欧州熱延コイル先物オプションにおける大規模取引は、EU鉄鋼市場におけるリスク管理手法の進化を象徴します。CBAMや新たな保護措置の導入は、市場にさらなる変動性をもたらすでしょう。今後は、現物取引と先物市場の連動性がより一層強まることが予測されます。

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