中南米市場が支えるブラジル産鋼板輸出動向:米国向け輸出減少を相殺

Brazilian steel plate


2025年8月、ブラジル産鋼板輸出動向は、中南米諸国への出荷増加に支えられ、堅調に推移しました。税関データによると、ブラジルからの鋼板輸出量は前年比1.3%増の56万9,314トンに達しました。特にメキシコとアルゼンチン向けが急増し、北米市場での輸出損失の大部分を補いました。これは、貿易環境の変化に対応するブラジルの柔軟性を示しています。

この市場シフトは、米国の関税政策に起因します。米国は6月4日以降、輸入鉄鋼に対する関税を25%から50%に引き上げました。その結果、最大の取引先である米国向け輸出は2ヶ月連続で減少しました。同様に、米国の関税政策はカナダ市場にも波及し、ブラジルからカナダへの鋼板輸出は前年の6万479トンからゼロへと激減しました。


米国の保護主義と市場シフトの波紋

このような貿易摩擦が、ブラジル産鋼板輸出動向を大きく変えました。ブラジルの鉄鋼メーカーは、新たな市場開拓を積極的に進めています。結果として、メキシコ向け輸出は前年の26トンから6万9,936トンへと急増しました。また、アルゼンチン向けも814トンから3万241トンへと大幅に増加しました。現在のブラジル産鋼板価格は、地域によってFOBで460から475/tの範囲で推移しています。これは、市場の不確実性が価格に反映されていることを示します。


金属フォーカス 編集部コメント

米国による高関税政策は、意図せずして世界の鉄鋼サプライチェーンに大きな波及効果を生んでいます。ブラジルは特定の市場への依存を避けるため、輸出先を多角化する戦略を加速させています。今後、貿易保護主義の台頭は、鉄鋼製品のグローバルな流通パターンをさらに変化させるでしょう。


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