米英鋼材貿易交渉の停滞とBRICS台頭が示す貿易政策の新局面

U.S. British steel trade


米国と英国の鋼材貿易交渉が再び停滞し、BRICS諸国の動きも活発化しています。トランプ政権下での米国の貿易政策は依然として多くの不確実性を抱え、世界の金属・鉱物市場に影響を及ぼしています。この記事では、米英貿易協議の現状とBRICS連携の動向を踏まえ、今後の金属市場の展望について分析します。


米英鋼材貿易協議の現状と課題

米国と英国は2025年9月に鋼材貿易交渉を再開しましたが、依然として明確な合意には至っていません。英国は25%の鋼材・アルミニウム関税を維持し、米国側はさらに厳しい措置を検討しています。以前に予想された「貿易協定のテンプレート」は機能せず、実質的な関税緩和や割当枠の設定は実現していません。

また、米国の対中貿易政策も依然として不透明で、USMCA(米・メキシコ・カナダ協定)加盟国との協議も停滞しています。これにより、グローバルな金属供給チェーンには大きな混乱とコスト増大が懸念されます。


BRICSの連携強化と米国の貿易戦略への影響

BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に加え、イラン、エジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、インドネシアなどが参加する新たな連携が注目されています。ブラジル大統領ルラ氏の主導で行われたオンライン会議では、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策への対抗や多国間主義の強化が議題に上りました。

ただし、BRICS各国は米国との貿易摩擦の激化を避ける姿勢も見られ、統一的な強硬策には慎重です。しかし、この動きは米国の貿易政策に対抗する新たなパワーバランスの兆候と捉えられます。


金属業界が直面する法的・政策的不確実性

米国では連邦控訴裁判所が「国際緊急経済権限法」に基づく相互関税を否定し、最高裁判所への持ち込みが決まりました。これにより、大統領の貿易政策決定権が制限される可能性があります。鋼材業界では、この法的リスクが投資や生産計画に大きな影響を及ぼしています。

また、CRUのAI分析ツール「ORAC」は、鋼材市場参加者が最も求めているのは「セクション232(安全保障貿易措置)の法的確実性」と結論づけています。市場関係者は今後の関税政策の明確化を強く望んでいるのです。


金属フォーカス 編集部コメント

今回の米英貿易交渉停滞とBRICS連携強化は、グローバル金属市場に新たな不確実性をもたらしています。特に法的な制約強化や多国間主義の動きは、貿易摩擦の構図を変える可能性が高いです。今後は政策の透明性と国際協調が、業界の安定成長に不可欠となるでしょう。

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