![]() |
Mexico Tariffs |
メキシコの新関税計画とその背景
メキシコ政府は2025年9月にアジア諸国を中心とした約1,400品目に対し、10~50%の関税引き上げを発表しました。特に中国製自動車には2026年から50%の関税を課す予定です。これまでメキシコは中国製自動車に対して20%の関税を課していましたが、今回の措置は国内生産の強化と貿易不均衡是正を目的としています。クラウディア・シェインバウム・パルド大統領は「国内で生産可能なものは輸入を控えるべきだ」と述べ、WTOの枠組みの中で貿易協定を結んでいない国に対する関税強化を明言しました。
国内鋼材産業の防衛と市場の反応
メキシコは現在、米国からの鋼材とアルミニウムに50%、自動車部品と自動車には25%の関税を課されています。2025年のデータによると、メキシコから米国への鋼材輸出は前年同期比で20.2%減少し、輸出全体も14.1%減少しています。シェインバウム大統領は関税引き上げにより「より多くの車両を国内で生産し、輸入を減らす」狙いを示しました。
また、輸入価格は政府の措置により数ヶ月で倍増しており、輸入鋼材は大幅に減少しています。カナセロ(メキシコ鋼協会)によれば、2025年7月の鋼材輸入は前年同月比で14%減少し、年初から7月までの期間でも13.1%減少しています。
米国とのUSMCA交渉を見据えた関税調整と業界への影響
今回の関税改定は、2026年に予定されているUSMCA(米・メキシコ・カナダ協定)見直し交渉に向け、米国との立場を調整する狙いがあります。ある生産者は「メキシコは輸入規制を強化することで米国との摩擦を減らし、信頼できるパートナーとしての立場を強化しようとしている」と述べました。
一方で、この関税引き上げは国内鋼材産業に「混合効果」をもたらすと指摘されています。輸入規制により国内生産が促進され、地域のサプライチェーンが強化される反面、低コスト輸入材に依存していたメーカーには短期的なコスト増や資材不足の課題が生じる可能性があります。
金属フォーカス 編集部コメント
メキシコの関税強化策は国内鋼材産業の保護を目的としつつ、米国との貿易協定調整を念頭に置いた戦略的な動きです。しかし、価格低迷が続く中で、政策が業界回復に直結している兆候はまだ見られません。今後は関税政策のバランス調整と市場の需要回復が鍵を握るでしょう。