ウクライナ製鉄業界、親ロシア派地域へのスクラップ輸出に危機感

Ukrmetprom Transnistria


ウクライナの製鉄業界団体Ukrmetpromは、親ロシア派の飛び地である沿ドニエストル共和国へのスクラップ輸出に強く反対しています。国内の二次金属協会(UAVtormet)が、同地域への輸出を簡素化する手続きを求めたことが発端です。Ukrmetpromのオレクサンドル・カレンコフ会長は、こうした動きを「国家反逆罪」に分類すべきだと厳しく批判しています。ウクライナの鉄鋼業界は現在、スクラップ不足という深刻な課題に直面しているためです。


鉄鋼業界の存続を脅かすスクラップ輸出

ウクライナの製鉄所は、スクラップなしでは操業できません。しかし、この戦略的原料の輸出量は過去最高の水準に達しています。さらに、UAVtormetが沿ドニエストル共和国への輸出を促す動きは、国内産業の存続を脅かす行為です。ロシアによる侵攻以来、ウクライナの鉄スクラップ業界は、労働力不足や処理能力の課題に直面しています。加えて、法的に義務付けられている需要と消費のバランスに関するデータを、UAVtormetは政府に提出していません。

メトインベスト・グループの最高執行責任者によると、鉄スクラップの管理されていない輸出は、ウクライナ鉄鋼業界にとって最大の課題の一つです。開戦当初、輸出量は月間わずか4,000トンでした。しかし、現在では月間50,000トンにまで急増しています。鉄スクラップ1トンが輸出されるごとに、ウクライナは800〜900ドルの外貨収入を失っている計算になります。これは、国家経済と鉄鋼産業の双方に深刻な打撃を与えています。


金属フォーカス 編集部コメント

ウクライナのスクラップ輸出問題は、単なる貿易の問題ではありません。これは、国内産業の基盤、国家の安全保障、そして経済的安定に直接関わる重大な問題です。親ロシア派地域への輸出は、事実上、紛争相手への資金提供となり、国際的なビジネス倫理からも許容されません。今後、ウクライナ政府には、国内産業保護と国家安全保障の観点から、この戦略的資源に対する厳格な管理体制の構築が求められるでしょう。

コメントを投稿