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Arcelormittal blast furnace |
世界的な鉄鋼大手アースラ・ミタルは、スペイン・アストゥリアス州における現在の工業配置に疑問を呈しました。同社スペイン部門の広報ディレクターは、高炉を含む現在の事業体制を維持することが非常に困難であると述べています。特にヒホン製鉄所のA高炉は耐用年数が迫っており、大規模な投資が必要です。一方でB高炉もメンテナンスのために稼働を停止する予定です。現在の市場環境下では、このような巨額の投資は現実的ではありません。
アストゥリアス事業の将来を左右する複合的要因
事業継続の不確実性を高める要因は複数存在します。まず、環境規制です。アースラ・ミタルは、地域当局との環境協定に基づき、12月31日までに焼結工場Aの操業を停止しなければなりません。これにより、同社は焼結鉱を輸入する必要が生じ、生産コストが大幅に増加します。その結果、2基の高炉を維持することの実現可能性に疑義が生じています。さらに、欧州の鉄鋼・金属向け行動計画や炭素国境調整メカニズム(CBAM)の改革も、同社が直面する課題の一部です。
アースラ・ミタルは、スペイン事業の将来について「見通しが立たない」と表現しています。この不確実性は、同社の直接雇用だけでなく、関連する数十社に及ぶサプライチェーンにも影響を与えるでしょう。同社は、政治、エネルギー、市場における不利な状況を理由に、直接還元鉄(DRI)プラントへの投資計画を延期しました。この状況は、欧州全体の鉄鋼業界が直面する構造的な課題を浮き彫りにしています。
金属フォーカス 編集部コメント
アースラ・ミタルの動向は、単一企業の問題に留まらず、欧州鉄鋼業界全体が抱える高コスト構造と環境規制の板挟みを象徴しています。特に、高炉の改修や環境投資に対する見通しの不透明さは、旧来の製鉄プロセスが岐路に立たされていることを示唆します。今後は、既存設備の維持か、あるいはグリーン鉄鋼への移行を促す政策的・財政的支援が不可欠となるでしょう。