![]() |
brazil steel slab |
ブラジル鉄鋼産業は、2025年8月に生産量、国内販売量、輸入量がすべて減少しました。この急激な落ち込みは、主に米国が鉄鋼輸入関税を倍増させたことが直接的な原因です。粗鋼生産量は前年比で4.6%減少し、約286万トンとなりました。特に半製品であるスラブの生産量は21%も減少し、59万1,000トンにとどまりました。
この生産減少は、ブラジルの主要なスラブ輸出先である米国への貿易が停滞した結果です。米国は6月4日から鉄鋼輸入関税を50%に引き上げました。これを受けて、ブラジルの鉄鋼メーカーはスラブ輸出先を中南米の他の市場に転換しました。その結果、スラブ輸出量は前年比で増加しました。しかしながら、この転換は生産量全体の減少を補うには至っていません。
貿易のシフトと市場への影響
米国の関税引き上げは、ブラジル鉄鋼産業全体に波及しています。圧延鋼材の生産量も前年比5.5%減少し、198万トンとなりました。国内市場も同様に低迷し、圧延鋼材の国内販売量は前年比で減少しました。一方で、鉄鋼製品の輸入量は24%も減少しました。これは、国内需要の減退と高関税による影響を反映しています。
ブラジル鉄鋼産業は、米国市場への依存度を再考する転換点に直面しています。米国への輸出が困難になった結果、ブラジルは新たな輸出市場を積極的に開拓しています。加えて、国内市場の活性化も重要な課題です。今後、政府と業界団体がどのような政策を打ち出すか、動向が注目されます。
金属フォーカス 編集部コメント
米国による関税措置は、ブラジル鉄鋼産業にサプライチェーンの再構築を強く促しています。従来の輸出モデルから脱却し、多様な市場への分散化を進めることが喫緊の課題です。また、国内需要の喚起や高付加価値製品へのシフトも必要でしょう。この試練を乗り越えれば、ブラジルはより強靭なグローバルプレイヤーへと進化する可能性があります。