ジンダル・スチールが独ティッセンクルップ買収へ:欧州低排出スチール産業の未来

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インドの鉄鋼メーカーであるジンダル・スチールが、ドイツのティッセンクルップの欧州鉄鋼部門買収に向けた交渉に入ります。同社は、拘束力のない買収提案を提出しました。この動きは、欧州低排出スチール産業を再構築する可能性を秘めています。

ジンダル・スチールは、ティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパを「欧州最大の総合低排出スチールメーカー」へと変革する計画です。この計画は、ドイツでの鉄鋼生産を確保し、新たなビジネス機会を創出します。ジンダルは、デュイスブルクにおけるDRI(直接還元鉄)プロジェクトを完了させ、さらに電炉(EAF)の生産能力を増強する意欲を示しました。同社は、この計画に20億ユーロ以上を投じることを約束しました。


脱炭素化をめぐる欧州鉄鋼業界の動き

このジンダルの大胆な提案は、他の欧州鉄鋼メーカーとは対照的です。ルクセンブルクを拠点とするアルセロールミッタルは、経済的実現可能性への懸念から、ブレーメンとアイゼンヒュッテンシュタットでのDRIおよびEAFプロジェクトを中止しました。一方で、ティッセンクルップは、生産能力と人員削減を進めています。昨年、同社は欧州鉄鋼部門の株式20%をドイツのインフラ投資家EPコーポレート・グループ(EPCG)に譲渡しました。さらに、EPCGは追加で30%の取得を目指し、50対50のジョイントベンチャー設立を模索していました。


買収がもたらす地政学的変化とサプライチェーン再編

ジンダル・スチールの買収提案は、欧州の鉄鋼サプライチェーンに大きな影響を与えます。ドイツのフュッテンヴェルケ・クルップ・マンネスマン(HKM)社の株式売却も進む可能性があります。ティッセンクルップはHKMへの供給契約を終了しており、株式売却が最善の選択肢と見ています。この一連の動きは、グローバルな鉄鋼市場におけるM&A(合併・買収)の活発化を示しています。欧州低排出スチール産業は、今後、新たな資本と技術によって再定義されるでしょう。


金属フォーカス 編集部コメント

ジンダルによるティッセンクルップの買収は、欧州の鉄鋼産業における脱炭素化競争の新たなフェーズを告げるものです。インドの資本が欧州低排出スチール産業の変革を牽引する可能性は、グローバルなサプライチェーンの再編を加速させるでしょう。技術投資と資本注入がどのように市場競争力を高めるか、今後の動向に注目が集まります。


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