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Acciaierie d’Italia |
イタリア最大の鉄鋼メーカー、アッチャイエリーエ・ディタリア(ADI)は、タラント製鉄所の高炉4号機を予期せぬ形で停止しました。原料を供給するコンベアベルトの損傷が原因です。この高炉は、同工場で唯一稼働している生産設備でした。同社は人員や設備への安全上のリスクはなかったと発表しています。
生産活動の停滞と社会的緊張
この一時的な高炉停止は、従業員や労働組合の間で深刻な懸念を引き起こしました。高炉4号機は、既に最小限の銑鉄生産しか担っていません。タラント製鉄所では、他の高炉が停止中であり、再稼働には多額の投資が必要です。こうした状況は、アッチャイエリーエ・ディタリアの生産活動が停滞している現実を明確に示しています。
アッチャイエリーエ・ディタリアは、労働省に対し、4,450人の従業員に対する一時帰休プログラムの延長を申請しました。この中には、タラントの3,800人以上が含まれます。これは生産活動のさらなる縮小を意味しており、地域における社会的緊張を高める要因となっています。同社の経営陣は、現在の生産水準が費用を賄うのに不十分であると認めています。
将来展望と政府の役割
中期的には、高炉2号機の再稼働が計画されています。しかし、生産量を本格的に回復させるには、現在差し押さえ状態にある高炉1号機の修復が不可欠です。労働組合は、明確な政府戦略と投資保証がなければ、タラント製鉄所は欧州鉄鋼産業における中核的な役割を失うと警告しています。
イタリア政府は今年6月、アッチャイエリーエ・ディタリアに2億ユーロの追加財政支援を決定しました。この資金は、売却交渉が進行する間、同社の運営を継続させるために充てられます。新オーナーへの事業譲渡は、2025年に向けてイタリア当局にとって最も重要な産業問題の一つです。
金属フォーカス 編集部コメント
今回の高炉停止は、技術的な問題に留まらず、アッチャイエリーエ・ディタリアが抱える構造的な脆弱性を浮き彫りにしました。唯一稼働している設備に依存している現状は、サプライチェーン全体にとって大きなリスクです。政府と新オーナー候補による迅速かつ抜本的な解決策が、欧州の鉄鋼供給と地域の雇用を守る鍵を握っています。