インドの鉄鋼輸出が2025年4~8月に前年比22%増加—EU向けが最大市場に

India steel exports


インドは2025年4月から8月までの5か月間において、鉄鋼輸出量を前年同期比22%増の320万トンに拡大しました。特にEUが最大の輸出先となり、インドの鉄鋼産業はグローバル市場での存在感を強めています。これはインドの生産能力増強と世界的な鉄鋼需要の変化を背景としています。


インド鉄鋼輸出の内訳と市場動向

2025年4~8月期のインド鉄鋼輸出は、ホットロール鋼(HRC)やパイプ長尺製品で顕著な伸びを見せています。HRC/シートの輸出は前年同期比12%増の67万トン、パイプは26%増の80万トン、長尺製品も26%増の29万トンに達しました。一方で、冷間圧延鋼板(CRC)の輸出は10%減の19万トンと減少傾向を示しました。ステンレス鋼の輸出も2%増の30万トンに留まっています。

欧州連合(EU)向けの輸出は前年同期比32%増の137万トンと急増しました。EUは引き続きインド鉄鋼の最大輸出先となっています。この背景には、EUの炭素国境調整措置(CBAM)導入に関する懸念があり、EUの輸入業者が規制導入前の駆け込み需要を増やしていることが挙げられます。これによりインドの鉄鋼メーカーも積極的に受注を確保しています。


地域別の課題と今後の展望

中東市場へのホットロール鋼の輸出は、夏季の需要減退と中国製品の市場優位により停滞しています。インド鉄鋼業界は価格競争力の維持と市場多様化が課題です。なお、インドは2024/2025年度に年間生産能力2億500万トンの目標を達成し、2030/2031年度に3億トンの生産能力を目指す戦略を堅調に進めています。これは同国が今後も世界の鉄鋼供給において重要なプレーヤーであることを示しています。


金属フォーカス 編集部コメント

インドの鉄鋼輸出拡大は、グローバルな供給チェーンにおける同国の役割を強化します。特にEUのCBAM実施を控えた駆け込み需要は、短期的な市場変動を引き起こす一方、中長期的には環境対応を進める各国メーカーの競争力にも影響を与えるでしょう。今後はインドの生産能力拡大と価格競争力維持が、世界市場における地位確立の鍵となります。


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