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Hot Rolled Coil |
2024年6月、EU向け**熱延コイル(HRC)**の輸入量が急増しました。第三国からの輸入は84万4,576トンに達し、今年の月間最高を記録しました。これは昨年の7月以来の最高水準です。輸入量の増加は、炭素国境調整メカニズム(CBAM)と厳格化されるセーフガード制度への対応策と見られます。一部のバイヤーは、今後の規制強化に備え、前倒しで在庫を確保していると考えられます。一方で、サービスセンターは、第4四半期に大量の輸入材が到着することで、新規の需要が抑制される可能性を指摘しています。
インドネシアからの安価な輸入が市場を混乱させる
6月の輸入急増を牽引したのは、インドネシアとトルコ、ウクライナです。特に注目すべきはインドネシアからの輸入です。同国は現在、EUの鉄鋼セーフガードから免除されています。インドネシアは6月に15万トン以上をEUへ輸出しました。その平均着地価格は1トンあたり467ユーロと、日本の456ユーロに次ぐ安値でした。EUの鉄鋼メーカーは、インドネシアからの安価な熱延コイルの流入を警戒しています。新たな輸出業者が低価格でEU市場に参入しているためです。
セーフガード適用か?今後の展望と市場への示唆
EUの鉄鋼メーカーは、第4四半期にインドネシアがセーフガードの適用対象になることを期待しています。法務専門家は技術的には可能だと示唆します。しかし、これは発展途上国に対する免除措置の年間見直しという、ECの通例から外れる必要があります。一方、ユーロファー(欧州鉄鋼連盟)は、2026年1月以降の発展途上国向け免除廃止を求めています。輸入業者は、CBAMと輸入割当リスクを考慮し、11月以降のインドネシアからの輸入を控える動きを見せています。この状況は、EUの熱延コイル市場にさらなる不確実性をもたらします。
金属フォーカス 編集部コメント
今回の熱延コイル輸入動向は、EUの鉄鋼市場におけるCBAMとセーフガード制度の複雑な影響を示唆しています。特に、インドネシアのような発展途上国からの安価な輸入は、EU域内メーカーの生産を脅かす可能性があります。今後、ECがセーフガード適用範囲を拡大するかどうかが、市場の価格と需給に大きな影響を与えるでしょう。メーカーや投資家は、これらの政策動向を注視し、サプライチェーン戦略を再考する必要があります。