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Ferro Alloys |
2024年12月に欧州委員会(EC)が開始したセーフガード調査は、EUのバルク合金市場に不確実性をもたらしています。特に、フェロシリコン、シリコマンガン、フェロマンガンの3品目が対象です。当初、ECは最低輸入価格の導入を検討しました。これは市場関係者を驚かせ、一時的に価格を急騰させました。しかし、措置は発動されず、市場は混迷を深めています。この状況について、国際貿易弁護士アルノウド・ウィレムス氏(キング&スパルディング法律事務所パートナー)は、今後の展開について3つのシナリオを提示しています。
諮問投票で割れた加盟国の意見が事態を複雑化
ECはフェロアロイの最低輸入価格について、7月末に加盟国に諮問投票を実施しました。この投票は賛成・反対が8票ずつで、結果が真っ二つに分かれました。通常、暫定措置案が加盟国の支持を得た場合、ECは措置を推進します。しかし、今回の票割れは異例の事態です。ウィレムス氏は「このような状況は前例がない」と述べています。暫定措置に関する投票はあくまで諮問的ですが、加盟国の意見割れは最終的な措置の導入を阻む可能性があります。
欧州委員会が取りうる3つの選択肢と市場への影響
ウィレムス氏によると、ECが今後取りうる選択肢は3つあります。まず、1つ目は「いつでも暫定措置を導入する」ことです。ただし、この可能性は低いと見ています。2つ目の選択肢は「最低価格を引き下げるか、関税割当(TRQ)制度へ移行する」ことです。これは現在の鉄鋼セーフガード措置と同様の仕組みです。最後に、3つ目の選択肢として「11月19日の最終措置導入期限に向けて再調整する」ことを挙げています。この期限までに最終措置がなければ、ECは調査を最初からやり直す必要があります。
ECは当初、現行の輸入価格ではEU域内生産を十分に支援できないと判断しました。その結果、市場価格を大幅に上回る最低輸入価格を提案しました。これは、生産者の収益を向上させ、EU域内での生産拡大を促す狙いがあったと見られます。しかし、この提案水準は、通常のセーフガード措置よりも反ダンピング措置に近いものです。このため、業界からの強い反発を招きました。ECが、広範囲なグレードを持つ製品群に対する最低価格設定の複雑さを過小評価していた可能性も指摘されています。
金属フォーカス 編集部コメント
今回のECの対応は、通常のセーフガード調査とは異なる様相を呈しています。暫定措置の発動が見送られた背景には、加盟国の意見対立だけでなく、業界からの予想を上回る強い反発があったと見られます。今後の焦点は、ECがどのような形で最終的なセーフガード措置を講じるかに移ります。最低輸入価格の導入が難航する中、関税割当制度への移行が現実的な選択肢として浮上するでしょう。この決定は、フェロアロイ市場の価格構造と流通経路に大きな影響を与える可能性があります。