EU市場における熱延コイル輸入が歴史的低水準に:今後の政策動向に注目

EU HRC


欧州連合(EU)市場への熱延コイル輸入量が、過去数年間で最低水準に達しています。EUのデータによると、現在の四半期における割当枠(クォータ)の利用率は、過去3年間の同時期と比較して大幅に減少しました。この状況は、欧州の鉄鋼市場に大きな変化をもたらしています。


政策変更と需要低迷が輸入減少の背景に

EU市場への熱延コイル輸入減少は、複数の要因が複合的に作用しています。まず、以前に実施された政策、特に「その他諸国」向けのクォータ上限引き下げや、エジプト、日本、ベトナムに対するダンピング措置が影響しています。加えて、EU域内の需要が全体的に低迷していることも大きな要因です。これらの国々は昨年、EUの熱延コイル輸入全体の40%以上を占めていました。しかし、ユーロスタットのデータによれば、今年4月のシェアはわずか7.5%に留まっています。現在、トルコや特定の免除国が輸入の大半を占めています。


新たな輸入制限措置を巡る議論

クォータ利用率の急激な低下は、EUが今後の輸入制限措置をどう実施するかという課題を提起しています。欧州鉄鋼協会(Eurofer)は、2026年1月からの輸入量を50%削減するよう求めています。さらに、クォータの免除対象をなくし、50%の関税を課すことを要求しました。これらの措置は、輸入供給の割合を現在の約30%から15%に引き下げることを目的としています。ユーロファーの要請は、EU加盟11カ国から支持を得ています。しかしながら、クォータの急激な削減は、既に歴史的低水準にある熱延コイル輸入量をさらに減少させ、市場の供給不足を引き起こす可能性があります。


金属フォーカス 編集部コメント

今回のEUの熱延コイル輸入動向は、EUが保護主義的な政策を強化する方向性を示唆しています。特にインドネシアからの輸入が急増しており、これが今後の政策対象となる可能性が高いです。クォータの削減は域内メーカーを保護する一方で、川下産業のコスト上昇や供給不安を引き起こすリスクもはらんでいます。今後の政策決定は、EU域内の需給バランスだけでなく、グローバルな貿易摩擦の行方にも影響を与える重要な転換点になると分析しています。


コメントを投稿