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英国の著名なデコイラーであるC Brown & Sonsは、新たな所有者であるHLD Groupによって、従業員の95%が解雇された。この決定は、同社の売上減少と激しい市場競争に対応したものだ。今回の事態は、英国の鉄鋼業界が直面する再編の圧力と、その過程で生じる雇用への影響を改めて浮き彫りにした。
C Brown & Sonsの経営悪化と買収の背景
C Brown & Sonsは、長年にわたり鉄鋼コイルのデコイリング事業を展開してきた。しかし、直近の財務諸表によれば、2024年5月期の売上高は前年の5,730万ポンドから4,260万ポンドへと大幅に減少し、142万ポンドの税引前損失を計上した。この業績悪化が、プライベートエクイティグループであるHLD Groupによる買収の直接的な引き金となった。HLD Groupは4月に同社をブラウン家から買収したが、その後急速に事業の再構築を進めている。
HLD Groupによる事業再編は、単なる経営改善に留まらない可能性を示唆している。業界関係者の中には、同社が「プレパック倒産」を計画し、土地を含む事業資産を再取得するのではないかという憶測も出ている。実際に、買収後には複数のサプライヤーが取引信用保険の取り消しや大幅な減額を報告している。これは、新体制への市場の不信感、あるいは将来的な事業の不透明性を反映しているのかもしれない。
HLD Groupと英国鉄鋼セクターにおける課題
HLD Groupのリンゼイ・カーン氏と関連企業の動向は、英国鉄鋼業界の複雑な構造的問題を象徴している。カーン氏が関わる企業は、過去にも同様のパターンで破産手続きに入った事例がある。例えば、今年2月に破産した鉄鋼サプライヤーのBenbow Steelsもその一つだ。これらの事例は、特定の金融グループが経営不振企業を安価で買収し、従業員削減や資産売却を通じて利益を追求するビジネスモデルが存在することを示唆している。
金属フォーカス 編集部コメント
英国の鉄鋼加工業界は、グローバルな需要変動と国内のコスト高に直面している。C Brown & Sonsの事例は、こうした逆風の中でプライベートエクイティファンドが果たす役割と、それがもたらす迅速かつ非情な事業再編を明確に示した。短期的には効率化が進む一方で、雇用の不安定化は業界全体の持続可能性に疑問を投げかける。今後、英国政府の産業政策が、こうした再編の動きにどう影響を与えるか注視が必要だ。