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Brazil rare earths |
ブラジルは豊富な希少金属資源を保有しているにもかかわらず、2050年まで採掘量で中国を凌駕することは難しい。この見解は、ブラジルのエネルギー移行イノベーションセンター(ETIC)のエリック・レゴ副所長が示したものだ。世界の鉱物資源加工が中国によってほぼ独占されている現状が、ブラジルが主要な希少金属市場に成長するのを阻害している。
資源大国ブラジルが直面する加工の壁
ブラジルは、世界の希少金属埋蔵量の23%を保有する資源大国だ。さらに、グラファイト埋蔵量で26%、ニオブ埋蔵量では94%と、圧倒的なシェアを持つ。しかしながら、埋蔵量の多さが必ずしも市場での優位性に直結しない。問題は、採掘後の加工プロセスに集中している。国際エネルギー機関(IEA)のデータによれば、2022年時点で世界の希少金属加工の90%を中国が占めている。これは、採掘において中国が68%のシェアを持つことよりも、さらに顕著な独占状態だ。
この加工能力の偏りは、世界が抱える構造的な問題を浮き彫りにする。レゴ氏が指摘するように、「世界は石油依存から、唯一の鉱物加工・供給国である中国への依存に移行している」。世界中の企業がブラジルのSerra Verdeや、米国のRare Earths Americas、Aclara Resourcesのように、ブラジルに目を向けている。しかし、ブラジル国内で商業生産している企業はSerra Verde一社のみであり、その生産量はまだごくわずかだ。
エネルギー転換と希少金属の役割、そして今後の展望
希少金属は、EV(電気自動車)や風力タービンといった、エネルギー転換に不可欠な産業で需要が急増している。IEAの予測では、ネオジムやプラセオジムなどの磁石用希少金属の需要は、2024年から2050年の間にEV分野で約6倍、風力発電分野で約2.5倍に拡大する。ブラジル政府は2050年のネットゼロ目標達成に向けて、リオグランデ海嶺などの海洋資源にも注目し、生産拡大を視野に入れている。しかし、この増大する需要に応えるには、単なる採掘だけでなく、加工能力の構築が不可欠だ。
金属フォーカス 編集部コメント
ブラジルは圧倒的な鉱物資源を保有するが、加工能力の不足が大きなボトルネックとなっている。この状況は、資源の「量」よりも「加工技術」と「サプライチェーン」の重要性が高まっていることを示唆する。今後、ブラジルを含む中国以外の国々が、加工分野への投資を加速させることが、地政学的リスクの分散と安定的な供給体制構築のカギを握るだろう。