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ban ferrous scrap and aluminum scrap exports |
欧州連合(EU)が米国に対し承認した対抗措置は、鉄鋼・アルミニウムへの追加関税に加え、鉄スクラップ輸出禁止を含んでいます。この措置は、貿易協定が合意に至らない場合、発動される可能性があります。世界の鉄鋼業界にとって、これは深刻な影響を及ぼす懸念があります。特に米国の電気炉(EAF)製鉄所は、高品質なプライムスクラップの安定供給源を失うリスクに直面するでしょう。
EUの追加措置が米国製鉄業にもたらす具体的な影響
EUが提案する措置では、8月7日からの米国産鉄鋼・アルミニウム製品に対する25%の輸入関税が盛り込まれています。さらに、9月7日からは鉄スクラップおよびアルミニウムスクラップの対米輸出が禁止される予定です。この鉄スクラップ輸出禁止は、米国のEAF製鉄所にとって死活問題に直結します。これらの製鉄所は、通常、国内市場の供給と価格圧力を緩和するため、海外からのプライムスクラップ輸入に大きく依存しています。具体的に、オランダ、ポーランド、スウェーデンは米国にとって重要なプライムスクラップ供給国であり、今年5月までの米国のプライムスクラップ輸入全体の27%を占めました。
加えて、米国製鉄所はブラジル産銑鉄への50%関税にも直面しています。その結果、原材料サプライチェーンはさらに逼迫する見込みです。EAFフラットロールミルにとって銑鉄は不可欠な原料です。EUは3月に報復関税を提案しましたが、8月初旬までその実施を延期しました。一方で、米国が3月からこれらの金属に課す関税は既に50%に引き上げられています。今回のEUの強硬姿勢は、貿易交渉の難航を示唆します。鉄スクラップ輸出禁止が現実となれば、グローバルな金属流通に大きな波紋を広げることは避けられないでしょう。
金属フォーカス 編集部コメント
今回のEUの対米対抗措置リストは、鉄スクラップという特定品目の輸出禁止という点で、従来の関税措置とは異なる直接的な供給制約リスクを提示します。これは、国際的な金属資源の確保戦略、特にスクラップに依存するEAF製鉄プロセスの見直しを加速させる可能性があります。サプライチェーンの強靭化が喫緊の課題となるでしょう。