米EU貿易協定:15%関税合意が鉄鋼・自動車産業にもたらす影響

U.S. EU trade agreement


米EU貿易協定が示す新たな通商秩序:15%関税のインパクト

米国とEUは、2025年7月27日の会談を経て、広範囲なEU製品に対する15%の基準関税で合意しました。ドナルド・トランプ米大統領はこれを「巨大な取引」と称し、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長も「公平なバランス調整」であり、米国との貿易を「より持続可能にする」ものだと確認しました。この米EU貿易協定は、世界の主要経済圏間の通商関係に大きな転換点をもたらします。


鉄鋼・アルミニウムセクターの「歴史的」割当とオーバーキャパシティ対策

米EU貿易協定の具体的な内容は今後数週間で詳細が詰められますが、フォン・デア・ライエン委員長はEU製品への15%関税が「明確な上限」となると強調しました。特に注目すべきは、鉄鋼およびアルミニウムセクターです。フォン・デア・ライエン委員長は、世界的な過剰生産能力に対処するため、「歴史的な」割当と「リングフェンシング」が適用されると述べました。関税は引き下げられ、割当制度が導入される予定ですが、最終的な関税率は未公表です。この動きは、両地域の鉄鋼市場に直接的な影響を与え、供給と価格の安定に寄与する可能性があります。


ゼロ関税品目の拡大と重要鉱物の位置付け

今回の米EU貿易協定では、航空機、一部の化学製品、特定のジェネリック医薬品、一部の農産物、天然資源、そして重要鉱物に対して「ゼロ・ゼロ関税(Zero-for-Zero tariffs)」が適用されます。さらに、このゼロ関税リストには今後、追加の製品が含まれる見込みです。特に重要鉱物に対するゼロ関税は、両地域の戦略的産業基盤強化に貢献し、サプライチェーンの安定化を促進するでしょう。米国は以前から欧州市場における自動車や農産物の不公平な販売条件を指摘してきましたが、今回の合意により、米国製自動車はEU市場へのアクセスに関して「最大の」変化を享受するとトランプ大統領は述べています。


金属フォーカス 編集部コメント

今回の米EU貿易協定は、国際的な金属市場に新たな秩序をもたらします。特に鉄鋼・アルミニウムセクターにおける割当制度の導入は、過剰生産能力問題への具体的な対策となり得ます。また、重要鉱物に対するゼロ関税は、電気自動車や再生可能エネルギーといった次世代産業のサプライチェーン構築を加速させ、長期的な需要構造に影響を与えるでしょう。金属業界は、この協定がもたらす貿易環境の変化に迅速に適応し、新たなビジネスチャンスを模索する必要があります。


コメントを投稿