日米貿易協定が自動車生産と鉄鋼需要に与える影響:金属業界の視点

US Japan trade deal


日米貿易協定、自動車産業と鉄鋼需要に新たな局面をもたらすか

2024年7月23日に締結された日米貿易協定は、日本から米国へ輸入される自動車への関税を25%から15%に引き下げます。この関税引き下げは、米国の自動車生産に恩恵をもたらす可能性があり、結果として鉄鋼需要を押し上げることが予想されます。しかし、日本からの輸入が大幅に減少するかどうかは不透明です。市場関係者やアナリストは、この協定が米国の自動車市場における競争を激化させると見ています。


米国自動車生産と鉄鋼需要への波及効果

自動車産業は、フラット鉄鋼生産全体の40%を消費し、主にガルバリウム鋼板や冷延コイルを使用します。また、特殊棒鋼(SBQ)長尺製品の需要の40~50%を占めます。Keybanc Capital Marketsの金属株式アナリスト、フィル・ギブス氏は、この点を指摘しています。協定によって米国国内の自動車生産が増加すれば、必然的に鉄鋼需要が高まるでしょう。特に、輸入金属の価格が明確になることで、米国での金属調達の試みが増える可能性も示唆されています。


スクラップ輸出関税と国内リサイクルの可能性

今回の協定では、日本の鉄鋼製品に対するセクター別関税は50%で据え置かれました。一方で、日本から米国への5500億ドルの戦略的産業投資基金への資金提供が合意され、これは米国のエネルギー、半導体、重要鉱物、医薬品、造船などの分野への国内投資に充てられます。この投資は、米国が自国のサプライチェーンを強化し、鉄鋼需要を満たすための基盤を固めることにも寄与するでしょう。また、コーネル大学の労働産業関係学部のアート・ウィートン氏は、自動車業界が価格の明確さを重視すると述べ、競争力があれば米国産の金属調達が増える可能性を指摘しています。


金属フォーカス 編集部コメント

日米貿易協定は、自動車および関連金属産業に長期的な影響を及ぼすでしょう。短期的な関税引き下げは市場に混乱をもたらす可能性がありますが、中長期的には米国の国内生産能力の強化と、それに伴う鉄鋼需要の安定化に寄与する見込みです。特に、戦略的産業への投資は、将来的な金属産業の成長を牽引する重要な要素となるでしょう。


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