アルセロールミタルのDRIプラント計画中止:脱炭素製鉄の経済的課題浮き彫りに

ArcelorMittal DRI Plant Plan Suspended


アルセロールミタルは、フランスのダンケルクにおける直接還元鉄(DRI)プラントおよび水素施設の建設中止を正式に発表しました。この決定は、同社のフランス法人CEOアラン・ル・グリ・ド・ラ・サル氏が議会の公聴会で明らかにしたものです。今回のアルセロールミタルのDRIプラント計画中止は、世界の脱炭素製鉄を目指す動きに大きな示唆を与えます。


高まるエネルギーコストと規制の遅延

当初、アルセロールミタルはダンケルクにDRIプラントと2基の電気炉を建設する計画でした。初期投資額は18億ユーロに上り、フランスエネルギー移行庁(ADEME)と8.5億ユーロの融資契約も締結済みでした。しかし、この大規模プロジェクトは最終的に延期されました。その背景には、国際市場における予測不能性、不公正な輸入に対する保護不足、そして炭素国境調整メカニズム(CBAM)導入の遅れがあります。加えて、ガス、電力、グリーン水素の価格高騰が投資の採算性を損ねました。フランスにおける産業用水素プロジェクト開発を支える短期的な経済モデルも欠如しています。

アルセロールミタルはダンケルクで最初の電気炉に12億ユーロを投資する計画です。この電気炉は2028年末から2029年初頭に稼働開始予定です。最終決定は今夏末に行われます。同社は最近、ドイツの2つの工場におけるカーボンニュートラル生産への転換計画も断念しました。その理由として、ドイツの高い電力コストを挙げています。ポーランドのアルセロールミタルも同様の見解を示しており、製鉄各社は単独で脱炭素化コストを負担することはできないと指摘しています。エネルギー価格が、脱炭素製鉄計画実施への大きな障害となっているのです。


金属フォーカス 編集部コメント

今回のアルセロールミタルのDRIプラント計画中止は、脱炭素製鉄の実現には技術だけでなく、経済的実行可能性と政策支援が不可欠であることを明確に示しました。エネルギー価格の安定化と、CBAMのような公平な競争条件を確立する国際的な枠組みが急務です。


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