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MoRe |
医療機器用途が急拡大、FDA承認でMoRe合金の採用加速
レニウムは長年、航空機用超合金の要素金属として使用されてきたが、医療分野での新用途が市場構造を変えつつある。
特にモリブデン-レニウム(MoRe)合金、なかでもMo50 Reは米FDAの承認を取得し、脊椎インプラントや心血管ステントに使用され始めている。
過去18か月で米国市場に複数のMoRe合金製医療機器が投入され、医療分野が航空分野に匹敵する消費規模になる可能性が指摘された。
リスボンで開催されたMMTA会議では、MiRus社が脊椎・構造的心疾患向けMoRe製品で複数のFDA認可を取得したことも報告された。
中国の航空需要も増加、医療用途と輸入競合が激化
レニウム供給は依然としてチリのMolymetに大きく依存しているが、2023年には中国が同社から26トンを輸入し、2018年の2トンから急増した。
米国航空産業が長年75%の世界需要を占めてきたが、今後は医療用MoRe合金との需給競合が強まる見通しだ。
MoRe合金は、耐疲労性・生体適合性に優れ、ニッケル・コバルト・クロム系インプラントのアレルギーリスクがなく、臨床試験では破損ゼロを記録している。
これにより、より小型で耐久性の高いインプラント設計が可能となり、医療現場での採用が広がっている。
高齢化が需要を後押し、供給制約は依然として課題
Titan Internationalによれば、MoReベースのインプラントは手術精度と耐用年数を大幅に改善する。
世界的な高齢化に伴い、整形外科および心臓血管系の信頼性ある医療機器需要が急増することが予測される。
しかし、レニウムは主に銅-モリブデン鉱石の副産物であり、新規鉱山の開発も進んでいない。
今後も一次供給は横ばいが続くと見られ、価格高騰がリサイクル促進の引き金になる可能性はあるが、短期的な供給逼迫は避けられない。
金属フォーカス編集部の視点:
医療用途でのレニウム消費拡大は、航空分野と並ぶ構造的需要変化をもたらしている。特にMoRe合金は、差別化された物性を武器に、ニッケル系材料を代替する動きを強めている。供給源が限定される中、価格ボラティリティやサプライチェーンの安定性確保が今後の業界課題となるだろう。
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