世界経済・市場の週間展望:タリフの影と強気の米雇用が交錯

 世界経済・市場

米雇用堅調が市場を下支え、世界的には成長懸念広がる

先週の世界経済は、関税政策の不透明感と成長予測の下方修正が交錯する中、比較的落ち着いた推移を見せた。
OECDは米国、独連銀はドイツの成長率を下方修正し、中国の購買担当者景気指数(PMI)も弱含みを示した。一方で、注目された米国雇用統計は市場予想を上回り、賃金上昇も顕著となったことで、市場に安心感を与えた。

中央銀行の動きでは、欧州中央銀行(ECB)が8回連続となる0.25%の利下げを実施。ただし、今後の金融政策スタンスは想定よりタカ派的な姿勢が強く、緩和期待を打ち消す内容となった。対照的に、インド準備銀行(RBI)は市場予想を超える0.5%の利上げを決定し、物価対策の強化姿勢を鮮明にした。

米国では、大型歳出法案(通称「ビッグ・ビューティフル・ビル」)が議会審議入り。財政赤字と債務の急増を懸念するCBOの試算も注目される中、財政と通商政策の両面での攻防が続く。加えて、英国内での米中貿易協議の開催が明らかとなり、地政学的な焦点が移る構えだ。

今週の注目ポイント:物価・貿易・財政の三重奏

1. 米中交渉と関税動向:
英国で行われる予定の米中協議では、米国内の「クリスマス商戦空白棚問題」への対応と輸出障壁の低減という短期課題に加え、長期的な戦略的利害が交錯する見通しだ。

2. 英国の歳出見直し:
英国では今週、各省庁の支出方針(3年間)および長期的なインフラ投資戦略が明らかにされる。低成長と債券市場の不安定化を背景に、歳出増の方向性は見える一方、削減分の具体性には不透明感が残る。
同時に、生産性向上に資する技術投資の分配も注目点となる。

3. 世界的なインフレ指標:
米国ではCPI(消費者物価指数)・PPI(生産者物価指数)が公表され、関税の価格転嫁効果が問われる重要データとなる。加えて、インフレ期待や消費者信頼感指数も注視対象だ。
欧州や新興国でも5月のインフレデータが相次ぎ、地域ごとの物価圧力が可視化される。

金属フォーカス編集部の視点:

市場はタリフ関連リスクとインフレ再燃の綱引き状態にある。米雇用の強さが短期的な支えとなる一方、ECBやRBIのように中銀の政策対応も二極化している。資源価格や貴金属市場は、こうした政策とインフレの波に敏感に反応する可能性があるため、今週のCPI・PPIの反応が注目される。

コメントを投稿