EUROFER、米国の鉄鋼関税50%引き上げに緊急警鐘

EUROFER

欧州市場に2700万トン流入の懸念、欧州委に即時措置を要請

欧州鉄鋼協会(EUROFER)は、米国が鉄鋼輸入関税を50%に倍増した決定を受け、欧州委員会に対し即時かつ実効性ある貿易措置の発動を求める緊急声明を発表しました。
米国の関税強化により、本来米市場向けであった最大2700万トンの鋼材が欧州に流入する可能性があるとEUROFERは警告しています。

現在、欧州市場では需要が低迷している中で、輸入品がすでに市場の約30%を占めており、供給過剰による価格崩壊のリスクが高まっています。EUROFERのアクセル・エッガート事務局長は「2018年のトランプ政権下で起きた輸入急増の再来になる。手をこまねいていれば、欧州鉄鋼業は水没どころか沈没する」と強い表現で訴えました。

また、EUから米国への年間約380万トンの鉄鋼輸出も関税引き上げにより競争力を失いかねないとし、「高品質な欧州製品ですら価格面で太刀打ちできない」と懸念を示しました。

EUROFERは、2024年に中断されたEU・米国間の鉄鋼交渉を早期に再開し、グローバルな過剰生産能力に共同で対処すべきとも主張しています。

一方、ドイツ鉄鋼連盟(WV Stahl)も今回の措置が欧州鉄鋼業に深刻な圧力をかけ、米欧間の貿易摩擦を新たな段階へと引き上げるものであると述べ、事態の深刻さを強調しました。

《金属フォーカス編集部コメント》

欧州鉄鋼業界は、米国の関税強化による「ショック波」に直面しています。輸出路を失った鉄鋼が大量に欧州へ向かえば、すでに脆弱化している域内生産は致命的打撃を受ける可能性があります。2026年のEUセーフガード措置満了を待たずに、有効な緊急措置を講じることが政策的に不可欠です。また、グローバルな過剰生産問題への米欧協調こそ、根本的な解決のカギとなるでしょう。

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