Canada Nickel、豪NetCarbと提携 ── 炭素隔離能力を10倍超に拡張へ

 Canada Nickel Company

クローフォード・ニッケル鉱山の年間CO₂固定能力、最大1,500万トンへ進化

カナダ・ニッケル社(Canada Nickel Company)は6月上旬、豪州の炭素隔離技術企業NetCarbと戦略的提携を結んだと発表した。NetCarbの技術は、超塩基性岩中のサーペンティン鉱物全体を対象にCO₂を固定するもので、同社独自のIPT Carbonation(間接鉱物炭酸化)プロセスを大幅に補完・強化する位置づけとなる。

カナダ・ニッケルによると、NetCarb技術は従来比で炭素隔離能力を10倍以上に高める可能性がある。これは、クローフォード鉱山(オンタリオ州ティミンズ)において、40年以上の操業期間で5億トン超のCO₂を固定できる規模に相当する。

「第3世代炭素鉱物化」技術でティミンズをゼロカーボン産業拠点に

NetCarbのCO₂活動スイング反応器を用いた手法は、サーペンティン鉱物を活性化し、マグネシウムを固体炭酸塩として再結晶させる。これにより恒久的なCO₂固定が可能となる。

カナダ・ニッケルは「NetCarbとの提携により、年間1,000〜1,500万トンのCO₂固定能力を持つ鉱滓処理が実現できる」とし、ゼロカーボン産業クラスターの構築に向けて、天然ガス発電や水素、バイオマス関連企業などとの連携も視野に入れる。

カナダ・ニッケルのマーク・セルビーCEOは、「NetCarbの技術は鉱物炭酸化の第3世代であり、炭素隔離能力を一桁引き上げる可能性がある」と述べた。

鉱山経済性も高評価、脱炭素×金属供給で注目

同社が2023年に発表したクローフォード鉱山のバンカブルFSでは、年産ニッケル4.8万トン(ピーク期)、コバルト800トン、PGE 13,000oz、鉄160万トン、クロム7.6万トンの生産を想定。税引後NPV(8%)は25億ドル、IRRは17.1%と、経済性でも高水準となっている。

同プロジェクトはカナダ政府が推進する「戦略的クリティカルミネラル5件」にも選定されており、脱炭素・資源安保の両面で国策と連動した鉱山事業として注目が高まっている。

金属フォーカス編集部コメント

カーボンマイナス型ニッケル供給という構図は、今後の欧米市場でのプレミアム評価にも直結しうる一方、NetCarb技術の大規模適用にはスケールアップ時の反応安定性やコスト回収性といった技術的リスクも伴う。とはいえ、クローフォードが示す“炭素隔離型鉱山”モデルは、グリーンメタル投資の新たな評価軸として、長期的に他鉱山にも波及する可能性がある。



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