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Antofagasta |
精鉱争奪戦が激化、処理費マイナスで製錬所の採算圧迫
世界最大の精製銅生産国・中国が進めてきた銅製錬能力の急拡大が、今や世界市場の不均衡を招いている。中国国内での銅精製量は2025年上期に前年比10%増と過去最高を記録。一方で、必要となる銅精鉱の供給は追いつかず、世界的な供給不足が深刻化。鉱山会社が価格交渉力を握る構図が浮上している。
チリのアントファガスタ(Antofagasta)は、2025年下期の契約供給分でマイナスの銅処理費(TC)を提示。精錬所が実質的に銅鉱石に“対価”を支払う状態となっており、収益構造が根底から揺らいでいる。
グレンコア(Glencore)は2月、フィリピンの精錬所を閉鎖し、カナダ拠点でコスト削減を進行中。欧州の旧式製錬所や中小の民間製錬所も打撃を受けており、「生き残り競争」が始まったとの声も上がる。
一方で、中国の大手国有企業は低コスト・高効率の体地方政府も背景にあり、利益が出なくとも稼働を継続するケースが多い。上海有色網によれば、中国の銅製錬能力は2025年通年で5%増の見通し。
ただし、約25%の国内生産を担う中小民間製錬所は市況変動の直撃を受けやすく、今後の減産リスクも指摘されている。
アフリカ・カクーラ銅鉱山(Ivanhoe Mines)の一時停止などにより鉱石供給がさらにタイト化する中、インドネシアのマニャール製錬所(Freeport McMoRan)など新規拠点の稼働は製錬能力過剰に拍車をかける。
金属フォーカス編集部コメント
銅は脱炭素・電化社会に不可欠な戦略金属であり、中国政府は製錬過剰にも一定の容認姿勢を見せる。一方で、市場経済的な圧力が高まれば、小規模・非効率製錬所の淘汰や構造改革に進む可能性も否定できない。今後は、鉱山会社と製錬会社の力関係が、価格形成と供給網全体の安定性に直接影響を与える局面に入ったといえる。
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