中国系民兵、ミャンマー東部の新レアアース鉱山を掌握

ミャンマーのレアアース

中国、ワ州軍を通じ希土類供給網の支配強化へ

中国政府の支援を受けた民兵組織が、ミャンマー東部シャン州の新たなレアアース鉱山の保護にあたっていることが関係者4人の証言で明らかとなった。中国は、米国との通商対立を背景に、戦略物資としての重希土類の供給源確保を急いでいる。

中国は重希土類酸化物(ジスプロシウム、テルビウムなど)の加工において世界的な支配力を有するが、その原料の多くをミャンマーに依存している。2025年1~4月の中国税関データによれば、同国の輸入量のほぼ半分がミャンマー産だった。

北部カチン州の主要鉱区が武装勢力の支配下に入ったことで供給が逼迫する中、中国企業はシャン州の山岳地帯で新鉱区の開発を進めており、現地では100人以上の労働者が化学薬品を用いた採掘作業に従事しているという。採掘された鉱石は中国国境に向けて運搬されており、衛星画像でも複数のリーチングプールの存在が確認された。

この鉱区は、中国との長年の軍事・商業関係を持つワ州連合軍(UWSA)が管理しており、彼らはミャンマー最大級の錫鉱山も掌握している。同軍の制服やIDカードによる通行規制など、鉱山地域は強固に支配されている模様だ。

ワ州の新鉱山では中国語を話す管理者が現場を運営しており、事務所には中国企業のロゴも確認された。英ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスのネハ・ムケルジー氏によれば、同地域での生産コストは他国の7分の1に抑えられ、莫大な利幅が見込めるという。

また、衛星解析を行った専門家によれば、これらの鉱山はテルビウムとジスプロシウムを主目的とする「中規模以上」の鉱山とみられている。ワ州地域は過去35年間、ミャンマー国軍との紛争を回避しており、中国企業にとっては最も安定した鉱区と位置付けられている。

専門家は「カチン州の鉱山が混乱する中、シャン州での採掘は重希土類の主導権を中国が維持するための戦略的手段となっている」と指摘している。

金属フォーカス編集部コメント

ミャンマー東部における新たなレアアース鉱山の掌握は、重希土類供給における中国の地政学的優位性をさらに強化する動きといえる。カチン州の混乱によって供給リスクが顕在化する中、より安定的とされるワ州へのシフトは、代替供給源を持たない各国にとって懸念材料だ。とりわけ欧米諸国にとっては、戦略物資を通じた中国の交渉力が一層高まる可能性があり、今後の市場動向や外交戦略に大きな影響を及ぼすだろう。また、無規制・低コストで採掘されるレアアースの流通が続く限り、国際的な環境規制やサプライチェーンの倫理性に対する課題も深まっていく。

コメントを投稿