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Glencore |
輸出禁止措置が続く中、契約履行に影響―価格は回復基調へ
ロンドン上場の資源大手グレンコア(Glencore)は、コンゴ民主共和国(DRC)のコバルト輸出禁止措置を受け、一部供給契約に対して不可抗力(フォース・マジュール)を宣言したことが関係筋の話で明らかになった。これは予見不能な事態により契約履行が困難となった際に適用される法的措置で、同社がこの対応を取るのは異例だ。
コバルト輸出禁止、供給過剰と税収減への対策
DRC政府は2025年2月より4カ月間のコバルト輸出一時停止措置を導入し、価格低迷と税収減に対応。世界のコバルト供給の約8割を占める同国が強硬措置に踏み切った背景には、EV需要の鈍化と中国・洛陽モリブデン(CMOC)系の供給拡大による需給緩和がある。
この措置により、2024年に3万5,100トンのコバルト(含有量ベース)をコンゴで生産したグレンコアも供給体制の一部に支障が生じ、一部契約については不可抗力を宣言。ただし、同社は「すべての顧客には契約通りの供給を継続している」とロイターの問い合わせに回答している。
価格は底打ち、35%上昇
輸出禁止とともに、ユーラシアン・リソーシズ・グループ(ERG)も3月に不可抗力を宣言したことから、市場の供給懸念が強まり、価格は2月の1ポンド当たり10ドル(トン当たり2万2,000ドル)から約35%上昇。6月初旬時点で1ポンド15.80ドル(トン当たり3万4,832ドル)まで回復している。
コバルトは主にコンゴで銅鉱山の副産物として産出され、EVやスマートフォン向けのバッテリー化学品に使用される水酸化物が主力。金属コバルトは軍事や航空機用途に使われる。
DRC政府は6月22日に輸出停止措置が終了する予定だが、延長の有無や輸出枠(クオータ)制度の導入については未定とされる。
金属フォーカス編集部コメント
輸出禁止や不可抗力宣言といった“供給ショック”は短期的な価格反転要因にはなるが、根本的な需要不安が払拭されない限り、持続的な回復は難しい。EV市場の成長鈍化、中国系企業による供給圧力といった構造要因は今後も価格変動のリスク要因となるだろう。今後の焦点は、コンゴ政府が禁止措置の「出口戦略」としてどのような調整策を取るかにある。
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