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Pig Iron |
2025年5月の世界の銑鉄生産量は、前年同月比で1.5%減少し、1億1970万トンとなりました。月間ベースでは2.1%増加しています。このデータは、世界鉄鋼協会がウクルメトプロムを通じて発表したものです。今回の減少は、世界の銑鉄生産量が直面する構造的な課題を浮き彫りにしています。
銑鉄生産の内訳:高炉法の減少と直接還元法の動向
2025年5月における銑鉄生産の内訳を見ると、高炉法による生産量は1億720万トンで、前年同月比3.1%減、前月比2%増となりました。一方で、直接還元法による生産量は1250万トンで、前年同月比6.7%減、前月比2.5%増を記録しました。また、2025年1月から5月までの累計銑鉄生産量は5億8328万トンとなり、前年同期比0.3%の微減となりました。この期間、直接還元法が5350万トン、高炉法が5億2978万トンを占めています。高炉法の生産量減少傾向は、世界の銑鉄生産量における脱炭素化の動きと無関係ではありません。
主要生産国の動向と世界の銑鉄生産量への影響
主要な銑鉄生産国の動向を見ると、中国は1月から5月で3億6274万トン(前年同期比0.1%増)を生産し、依然として最大生産国です。インドは6363万トン(同7.5%増)と顕著な伸びを示しました。一方、ロシアは2495万トン(同1%減)、日本は2452万トン(同4.2%減)、韓国は1764万トン(同2%減)と、それぞれ減少傾向にあります。ウクライナは、40カ国の銑鉄生産国のうち14位に位置し、1月から5月で301万トン(同5.9%増)を生産しましたが、5月単月では64万4700トン(前年同月比1.3%減、前月比2.3%減)と減少しました。これらの主要国の生産動向が、世界の銑鉄生産量全体に大きな影響を与えています。
金属フォーカス 編集部コメント
世界の銑鉄生産量の減少は、原材料市場に短期的な価格変動をもたらす可能性があります。特に高炉法による生産量の減少は、環境規制強化や脱炭素化への移行期における構造的変化を示唆しています。直接還元法の伸び悩みは、技術導入の課題やエネルギーコストの影響を反映しているかもしれません。今後、金属産業は、持続可能な生産体制への移行と、変動する市場への対応力を両立させることが求められるでしょう。