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CBAM |
「安価な高炭素輸入が脱工業化と地球温暖化を加速」と警鐘
欧州鉄鋼協会(EUROFER)は2025年5月、EUの「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」に多数の抜け穴が存在するとして、早急な制度改革を求めた。EU鉄鋼業界が進める脱炭素投資が、安価で高炭素な輸入材によって損なわれる懸念があるとし、制度が現状のままでは、逆に地球規模の温室効果ガス排出を増加させかねないと警告した。
EUROFERは、EU鉄鋼輸出の70%が炭素価格制度を持たない国向けであると指摘し、輸出対策が不十分な現行CBAMは、競争力の喪失だけでなく、より高炭素な第三国製品への置き換えによって、気候変動対策としても機能不全に陥っていると批判した。
輸出措置や下流品の対象拡大など、10項目の是正策を提示
EUROFERは、CBAMを真に効果的な気候政策とするため、以下の具体的措置を求めている:
- 輸出向け製品への無償排出枠の維持(カーボンリーケージ回避)
- リソースシャッフリングの防止(意図的な低排出材の振り分けを排除)
- CBAMの下流の鉄鋼製品群への適用拡大
- ステンレス鋼304グレードの高排出特性への対応
- 製鉄に伴う間接コスト補填の継続と、フェロアロイの間接排出分の算入
- CBAM対象品の原産地を「溶解・鋳造された場所」に設定
- インワード・プロセッシング制度(再輸出向け免税措置)の廃止
- 長尺材およびステンレス鋼における排出原単位(ベンチマーク)の気候最適化
これらの是正案は、EU域内のクリーンな製鉄技術の競争力を維持し、CBAMの気候的実効性を高めることを目的としている。
金属フォーカス編集部の視点:
EUROFERの主張は、気候政策と産業競争力の両立というCBAMの根幹課題を鋭く突いている。抜け穴の放置は、グリーン投資の減速や生産移転を招くリスクがあり、日本や中国を含む対EU輸出国にも影響が及ぶ可能性がある。特に、下流品や間接排出を巡る制度設計が今後の焦点となるだろう。
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STEEL