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CATL |
CATLの操業再開と輸入急増が供給圧力に拍車
2025年5月下旬、中国の炭酸リチウム価格は1トンあたり70,000人民元近辺まで下落し、実に4年ぶりの安値を記録した。最大手電池メーカーCATLが2月初旬に江西省のJianxiawoリシア鉱精鉱プラントを再稼働したことで、国内供給が大幅に増加した。このプラントは中国全体のLCE(炭酸リチウム換算)能力の約6%を占めるが、原鉱は引き続き現地調達されており、鉱山本体は休止中である。
さらに、2025年1~2月の炭酸リチウム輸入量は前年同期比48%増の32,450トンに急増。内訳はチリ産が62%、アルゼンチン産が34%、韓国産が3.2%を占めている。チリのSQMや米国のアルベマール(Albemarle)などの主要リチウム生産者が増産姿勢を強めており、中国市場での供給圧力を一層高めている。
需要は政策転換と対米関税で減速へ
一方、需要面では不安材料が重なっている。中国政府が2月に新エネルギープロジェクトへのエネルギー貯蔵設備の設置義務を撤廃したことで、リチウム鉄リン酸(LFP)電池向けの炭酸リチウム需要が急減。これに加え、米国は中国製リチウムイオン電池に対する関税を2026年1月から48.4%へと大幅に引き上げる方針を示しており、輸出見通しに暗雲が立ち込めている。
2025年初頭には、中国からのリチウムイオン電池輸出が前年同期比59%増と急増したが、その多くは関税引き上げ前の「駆け込み出荷」と見られる。輸出の26%は米国向けであり、今後は大幅な減速が避けられないとの見方が業界内で強まっている。
市場見通し:在庫動向と政策が鍵に
このように、供給拡大と需要減速が同時進行する中で、炭酸リチウム価格はさらなる下落が予想される。市場アナリストの中には、短期的に価格が工場渡しベースでトン当たり70,000元前後にとどまる可能性を指摘する声もある。今後の価格動向は、関税動向と電池メーカーによる在庫補充のタイミング次第で大きく変動する可能性がある。
金属フォーカス編集部の視点:
炭酸リチウム価格の急落は、EVや蓄電池業界にとってコスト圧縮の好機となる反面、中国メーカーにとっては収益圧迫要因となる。供給過剰が長期化すれば、下流の電池材料市場や鉱山開発投資にも影響が及ぶだろう。今後の焦点は、関税発動後の輸出動向と、世界的な在庫調整局面の到来である。
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