EU、アルミ輸入にセーフガード調査開始──米国関税再導入とCBAM改革が引き金に

CBAM

欧州委員会は、2025年3月19日よりアルミニウム輸入に関するセーフガード調査を開始した。これは、米国が3月12日に鉄鋼・アルミに25%の追加関税を再導入したことに対抗し、EU市場への輸入転換の圧力に対応する措置だ。欧州は、米国市場を失うリスクを抱える一方で、流入する第三国アルミの急増に直面している。

現在、EU域内でのアルミ需要のうち国産供給は46%にとどまり、2021年以降、域内製錬能力の半分以上が停止。欧州委員会は、輸入増加が残る生産者の生存を脅かすと警鐘を鳴らしている。鉄鋼にはすでにセーフガード措置が導入されているが、アルミニウムには未適用であった。

「溶解地」基準とCBAM改革──抜け道封じと域内保護へ

EUはセーフガード措置に加え、いわゆる「溶解・鋳造(melt and pour)」ルールの導入を予定。これは、製品の原産地を“最初に溶かされた場所”で定義し、単純加工によるダンピング規制逃れを防ぐ。

さらに、炭素国境調整メカニズム(CBAM)も2025年後半に再調整される見通し。従来の鋼材やアルミ原料だけでなく、より多くの下流製品にも炭素課金を適用し、EU製品の競争力を守る狙いがある。

委員会は同時に、「カーボンリーケージ(域外流出)」対策として、EUからの輸出品に対する補填制度の整備や、回避輸出入に対する新たな反回避規則の導入も予定。これらは、CBAMが2026年に本格施行される前に完了する見通しだ。

スクラップ輸出規制と需要創出──循環経済と供給安全保障の両立へ

原料確保策として、欧州委は非鉄スクラップの輸出に対する規制強化を検討。第三国による輸出制限に対しては相互措置や輸出課金の導入も視野に入れる。

また、2026年末までに、建設などの戦略分野での鋼材・アルミ使用量に関する新たな需要喚起目標を提示予定。域内産業の支援と、EUのグリーン政策および循環経済の目標を両立させる方針だ。

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