中国の原料炭価格が下落、供給過剰と鉄鋼需要減退が要因【金属フォーカス】

原料炭

国内在庫増と負の市場心理、2016年以来の安値水準に迫る

5月16日〜23日の1週間で、中国の原料炭スポット価格(EXW、安沢)は2.6ドル下落し170.72ドル/トンとなった(Kallanish調べ)。国内の鉄鋼需要の低迷と在庫の積み上がりが背景にある。ブルームバーグによると、中国の需要減退は近隣アジア市場にも波及し、原料炭とコークス価格は2016年以来の低水準へと落ち込んでいる。

5月29日時点の大連商品取引所の原料炭先物価格は765元(約106.2ドル)/トン。一方、主要産地である山西省のコークス工場は83%の稼働率を維持し、減産の兆しはない(中国石炭運輸販売協会)。

豪州産価格は横ばいも、需給バランスに陰り

5月16〜23日の豪州産原料炭FOB価格は193.76ドル/トンとほぼ横ばい。一方で、東南アジア市場では豪州炭が高値過ぎて調達困難とされ、中国トレーダーがより安価な条件を提示。グレンコアは高品質炭を同地域に固定価格で販売しており、豪州炭の需給に影響を及ぼしている。

インドのコークス工場がモンスーン前に在庫を積み増す動きもあるが、それでも需給の緩和傾向には歯止めがかかっていない。

米国が原料炭を「重要鉱物」に指定

米国では原料炭が戦略的物資リストに追加された。国内鉄鋼業の支配的地位確立を目指す政策の一環とされ、今後の生産増と供給網の強化が予想される。

ただし、米国でも鉄鋼需要が低迷しており、企業はコスト管理を徹底しつつ、市場回復を模索する状況にある(S&P Global)。

【金属フォーカス編集部コメント】

世界的に鉄鋼需要の停滞と供給過剰が続く中、原料炭価格の回復は短期的に見込みにくい。中国市場の動向は依然としてグローバル価格形成に影響力が大きく、豪州炭の競争力低下や米国の政策シフトが今後の貿易構造を再編成する可能性もある。中長期的には、インドの需要拡大と各国の内製化政策の綱引きが焦点となろう。

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