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人類が初めて鉱物を求めて大地を削ったのは、遥か昔の旧石器時代・新石器時代にさかのぼる。銅や火打石、黄土などは、道具や武器、壁画の顔料として利用され、生存に不可欠だった。原始的な採掘ではあったが、それは間違いなく「鉱業」の始まりだった。それから数千年が経ち、現代の採掘産業はかつてない進化を遂げた。ドローン、AI、自動掘削機が活躍する世界的産業へと変貌を遂げた一方で、重要な問いが浮かび上がっている——「地球の資源を採掘する産業が、果たしてその地球を守れるのか?」
この問いに真正面から向き合うのが、2025年のアースデイ(4月22日)だ。テーマは「Our Power, Our Planet(私たちの力、私たちの地球)」であり、再生可能エネルギーの推進と2030年までのクリーン電力の3倍化が掲げられている。
銅、ボーキサイト、HPAが支える脱炭素化
この目標を支えるのが、太陽光パネル、風力発電、電気自動車に不可欠な鉱物資源である。豪Solis Minerals(ASX:SLM)のCEO、ミッチ・トーマス氏は「当社は銅の探鉱を通じて再生可能エネルギーと電動化の推進を支援している」と語る。銅は電力網やEVでの電力伝送に不可欠であり、EV一台あたりに使用される銅は内燃機関車の約4〜5倍の80〜100kgにのぼる。
同様に、Metro Mining(ASX:MMI)は再生可能エネルギーや軽量車両に不可欠なアルミニウムの原料であるボーキサイトの採掘を行う。同社環境部門責任者マーク・インバー氏は「アルミニウムは軽量でリサイクル性も高く、輸送や建設分野の脱炭素化に貢献する」と述べる。
さらに、Impact Minerals(ASX:IPT)はLEDやリチウム電池のセパレーターに使われる高純度アルミナ(HPA)の低炭素製造を目指している。同社のHPAは、従来のボーキサイト処理に比べCO2排出量が大幅に少ないとされ、太陽光発電や水の使用を最小限に抑える工程を導入予定だ。
責任ある採掘と国際基準の整備
国際鉱業金属協議会(ICMM)は2021年に温室効果ガス排出量(Scope1および2)の2050年ネットゼロ目標を掲げ、2025年には生物多様性の保全に向けた『ネット・ポジティブ・ネイチャー』目標も加えた。
ICMM環境ディレクター、ヘイリー・ジップ氏は「脱炭素と環境保全を同時に進めることが、鉱業が果たすべき責任」と述べる。2025年3月には『生物多様性の純損失ゼロ/純利益達成に向けたガイド』を公表し、持続可能な採掘の実現を図っている。
一方、豪大手BHP(ASX:BHP)は、西豪州ヤンディ鉱山で再生可能ディーゼル「加水分解植物油(HVO)」の試験運用を開始。Scope1排出量の最大40%削減が見込まれる。
鉱業は「採掘」の産業である一方、今や「回復」と「再生」を軸とした持続可能な未来づくりに貢献しようとしている。銅、ボーキサイト、高純度アルミナ——これらの資源は、単なる利益ではなく「目的のある採掘」の象徴となりつつある。
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