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| Middle East steel Market |
中東の鋼材市場は、表面上は落ち着いて見えるものの、実際には極めて厳しい供給制約に直面しています。アラブ首長国連邦(UAE)の主要鋼材メーカーであるAGSIのHussain CEOは、「コロナ危機よりも現在の状況の方が鋼材業界には挑戦的だ」と語りました。
AGSIの役割と地域鋼材市場への影響
AGSIは、100%リサイクル原料を使用した完全電気炉方式のネットゼロ炭素鋼を生産するUAE最大級のスクラップリサイクラーです。地域紛争やホルムズ海峡の輸送混乱により、従来の供給ルートが大きく制約されました。特に、ドバイのジェベルアリ港では物流が停滞し、インドや中国からのコンテナ輸送費が急騰しました。Hussain CEOは、従来1コンテナ300ドル前後だった運賃が、中国からは6,500〜7,000ドル、インドからは3,500ドルに跳ね上がったと指摘しています。
鋼材供給の不足と代替港の限界
UAE国内の鉄筋市場は、中国やインドネシア、イランからの鋼材ビレット輸入に依存していましたが、物流混乱により供給が不安定になっています。オマーンのソハール港やUAEのフジャイラ港を代替港として検討していますが、荷役能力やクレーン設備の不足で大規模な供給は困難です。国内輸送費も3月にはディーゼル価格上昇で2倍以上となり、輸入業者はソハール港からの陸送費や荷役費として1トンあたり約40ドルの追加費用を負担しています。
鉄筋価格の上昇と第2四半期の懸念
物流混乱は鉄筋価格を押し上げ、UAE国内外の価格は上昇しています。Emirates Steelは市場安定のため公式価格を据え置きましたが、他社はコスト上昇を反映し、1トンあたり200〜215ディルハムの値上げを実施しました。市場関係者によると、4月にはUAE国内の鉄筋消費量が約45万トンに減少すると見込まれており、供給制約が生産と需要のバランスに影響を及ぼす可能性があります。
AGSIの拡張計画は順調
Hussain CEOによれば、AGSIの鉄筋生産拡張計画は順調に進行中です。新設のHRM3圧延工場は4月に本稼働予定で、年産能力60万トンを有します。既存のHRM1工場は能力を倍増する改修工事中で、完成後にはAGSI全体の鉄筋生産能力は約164万トンに達する見込みです。短期的にビレット供給が改善しなければ一部工場の稼働を停止する可能性もありますが、長期計画は維持されています。
金属フォーカス 編集部コメント
中東鋼材市場の物流混乱は、地域の鉄鋼供給に深刻な影響を与えています。鉄筋価格の上昇や港湾制約は、建設需要や生産計画に直結し、サプライチェーン全体の効率性を試す状況です。AGSIの拡張計画は市場安定のカギとなるものの、原料確保が不可欠です。


