アンチモン生産の新潮流:Hillgroveプロジェクトが世界市場で果たす戦略的役割

Hillgrove antimony and gold project


オーストラリアのLarvotto Resources(ASX: LRV)は、ニューサウスウェールズ州のHillgroveアンチモン・金鉱プロジェクトを2026年第2四半期の商業生産に向けて前進させています。最新の冶金試験では、タングステンの副産物回収率が90%に達し、原料品位は16倍に向上しました。この成果は、シンプルでコスト効率の高い処理回路により、販売可能なタングステン精鉱の生産が可能であることを示しています。アンチモン生産は、特に西側諸国における戦略的鉱物としての重要性を増しています。


世界的需要と供給制約の中でのHillgroveの価値

アンチモンは、主に難燃剤、太陽光パネル、鉛蓄電池に使用される重要金属であり、米国では装甲貫通弾や精密光学機器にも不可欠とされ、クリティカルミネラルに指定されています。現在、世界のアンチモン生産は中国、ロシア、タジキスタンが大半を占め、中国が最大の生産・精錬国です。LarvottoのHillgroveプロジェクトは、世界トップ10のアンチモン鉱床の一つとされ、短期間での生産能力確立が期待されます。2026年には年間5,400トンのアンチモン生産を目指し、世界生産量の約7%を占める計画です。


西側市場への供給と戦略的インパクト

Hillgroveプロジェクトは、既にトレーディング会社Wogen Resourcesとのオフテイク契約を締結しており、全精鉱をロッテルダム価格で販売します。中国向けの出荷は想定されておらず、欧州やインドを含む非中国市場への供給が中心となります。アンチモン生産の拡大は、長年低迷していた西側世界の供給能力回復と、軍事・再生可能エネルギー用途への安定供給確保に直結します。加えて、Hillgroveは過去の鉱山活動による資源蓄積により、高品位のアンチモン・金複合鉱床を保有しており、戦略的価値は一層高まっています。


金属フォーカス 編集部コメント

アンチモン生産の増加は、世界的な供給制約の緩和に寄与します。特に西側市場での精錬・供給網の多様化は、軍事用途や再生可能エネルギー分野での安定調達に直結します。Hillgroveプロジェクトは今後4年間、世界市場における重要鉱物供給の鍵となるでしょう。

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