米国 放棄ウラン鉱山の浄化、初の連邦承認で環境リスクと資源回収の両立へ

DISA technologies uranium


米国政府は、初めて放棄ウラン鉱山の浄化を正式に承認しました。ワイオミング州のDISA Technologies社が、歴史的な放棄鉱山の廃棄物を安全に処理し、回収ウランを国内エネルギー用に活用できるライセンスを米原子力規制委員会(NRC)から取得したのです。


放棄ウラン鉱山浄化の背景と現状

第二次世界大戦期のマンハッタン計画に端を発する米国のウラン採掘は、多数の小規模鉱山と廃棄物を生み出しました。EPAの推計によれば、西部全域で放棄ウラン鉱山に関連するサイトは約1万5,000箇所存在します。これらの廃棄物はナバホ族居住地を含む部族土地にも広がり、放射性物質が土壌や水に浸出し、長年にわたり健康リスクをもたらしてきました。

DISA社は、高圧スラリーアブレーション(HPSA)技術を用い、廃棄ウラン鉱山を浄化するとともに、ウラン資源の再利用を目指します。従来の埋設や搬出のみの方法では、環境負荷やコストが高すぎるため、連邦承認は画期的な前例となります。


経済・エネルギー面への影響

米国は年間約3,200万ポンドのウランを必要としていますが、国内生産はわずか約67万7,000ポンドに留まります。一方、2024年には5,000万ポンドを輸入に依存しており、その25%はロシア産です。この依存度の高さは、戦略的ウラン備蓄の強化や国内資源回収の重要性を浮き彫りにしています。

DISA社の取り組みは、放棄鉱山から数億ポンド規模のウランを安全に回収できる可能性を示しています。ワイオミング州選出のシンシア・ルミス上院議員も、連邦承認を「安全かつ効率的な資源回収の新しいフレームワーク」と評価しています。


ナバホ族と地域社会の視点

ナバホ族居住地では1944年から1986年にかけて約400万トンのウランが採掘され、放射性廃棄物が土地に残りました。ナバホ族とEPAは数十年にわたり、廃棄物処理技術の導入を模索してきました。現在、DISA社の技術は商業規模での試験段階にあり、重金属と岩石の分離、廃棄物管理の実証が期待されています。

ナバホ族は低レベル廃棄物の近隣保管施設の設置も求めています。地域経済や安全性を考慮し、輸送リスクを最小化することが重要です。放棄ウラン鉱山の浄化は、環境改善と資源回収を両立させる実証モデルとなるでしょう。


金属フォーカス 編集部コメント

今回の連邦承認は、放棄ウラン鉱山の浄化と国内ウラン資源の戦略的利用を同時に進める初の事例です。今後、商業規模での技術実証に成功すれば、米国の核燃料安全保障や環境政策に大きな波及効果をもたらすでしょう。地方部族との協力は、持続可能な鉱山リハビリテーションのモデルケースになると期待されます。


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