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| Simandou Iron Ore Project |
アフリカ・ギニアに位置するシマンドゥ鉱山は、世界最大級の未開発鉄鉱石鉱床として注目されています。推定埋蔵量は30億トン以上で、鉄含有率は65%以上。中国企業が主導する開発により、鉄鉱石市場の勢力図に大きな変化が予想されます。
中国主導で進むシマンドゥ鉱山開発
シマンドゥ鉱山の開発は、リオティントや中国のChinalco、WCSなど複数企業による国際的な共同事業として進行中です。新設の鉄道と港湾施設により、鉄鉱石はギニア内陸部から海港まで迅速に輸送され、年内にも中国の製鋼業向けに出荷される見込みです。加えて、プロジェクト総額は230億ドルに上り、アフリカ史上最大の鉱業投資となります。
この鉱山開発により、世界の鉄鉱石市場では中国が価格交渉力を強化すると予想されます。これまで市場を主導してきたオーストラリアのBHP、ブラジルのVale、リオティントなど主要企業の影響力を相対的に低下させる可能性があります。また、シマンドゥ鉱山は「ピルバラ・キラー」と呼ばれ、オーストラリア鉱山の競争力に直接的な圧力をかける存在と見られています。
ギニア経済と持続可能性への波及効果
一方で、シマンドゥ鉱山はギニア国内の経済成長にも大きく寄与する見通しです。鉱山運営によりGDPは2030年前後までに25%増加するとIMFは予測しています。政府は鉄鉱石収益を教育、インフラ、鉄鋼産業など他分野へ投資し、資源依存型経済の課題を回避する戦略を打ち出しています。しかし、開発地域は生物多様性が極めて高いエリアであり、重金属や酸性排水による環境リスクや、450以上の村落への影響も懸念されています。
シマンドゥ鉱山は、世界の鉄鉱石市場の需給バランス、中国の資源戦略、アフリカの鉱業政策、そして地球環境保護の観点を同時に考慮する必要がある、グローバル戦略資源として位置付けられます。
金属フォーカス 編集部コメント
シマンドゥ鉱山の稼働により、中国は鉄鉱石価格の支配力を一層強化するでしょう。一方、ギニアは鉱業収益を経済多角化に活用できるかが将来の成長の鍵です。環境リスク管理が不十分だと、鉱山開発は長期的な社会的コストを伴う可能性があります。


