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| West Coast Scraps Market in the US |
米西海岸のスクラップ市場で注目すべき動きが見られています。今週、太平洋岸北西部の米国輸出業者がトルコの製鉄会社向けに5万トンの混合鉄スクラップ貨物を販売しました。この取引は西海岸の流動性不足を浮き彫りにすると同時に、新たなアービトラージ機会を示しています。貨物はHMS 1/2 90:10とシュレッドを含み、12月出荷予定ですが、価格は公表されていません。市場関係者によれば、HMS部分は約350ドル/トン、シュレッドは約370ドル/トンと推定されています。
西海岸とアジア市場の需給ギャップ
西海岸ではアジア向け需要の減少とトルコ市場の回復により、販売機会が限定されています。ArgusのVesselFinderデータによると、10月の西海岸バルクスクラップ輸出量は2016年以来の最低水準に落ち込み、36,000トンの貨物が1件のみ記録されました。モンスーンによるバングラデシュとインドでの建設活動停滞や、選挙前の融資難が影響し、地域需要が弱含みとなっています。一方、トルコでは建設向け鉄筋需要の増加とスクラップ供給不足が市場を押し上げています。
アービトラージの構造と今後の展望
今回の米国西海岸からトルコへの輸出は、輸送コストの優位性とトルコにおけるシュレッド価値の高さに支えられています。トルコ製鉄会社はHMS 1/2 80:20に対し、バングラデシュの5ドル/トンに比べ20ドル/トンのプレミアムを支払う傾向があります。過去10年間で西海岸からトルコへのバルク貨物は7件あり、いずれも4万2,000トン超で、輸送コストの効率性が大きく影響しています。アジア市場の構造変化や中国鋼材輸出の増加により、西海岸輸出業者はバングラデシュ依存からの脱却を模索しており、トルコ向けの新たな販売ルート開拓が期待されます。
金属フォーカス 編集部コメント
米西海岸の鉄スクラップ輸出は、地域的需給差を背景に新しい市場機会を創出しています。特にトルコ市場は高価値シュレッド需要が旺盛で、米国輸出業者にとって戦略的選択肢となります。今後、アジアと地中海地域間の価格・需要差を活用したアービトラージが増加する可能性があります。


