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| Latin American Steel Industry |
ラテンアメリカの鉄鋼業界は、中国からの圧倒的な鉄鋼輸出増加により深刻な圧力を受けています。Alaceroサミット2025では、地域内生産強化と輸入依存脱却の必要性が改めて強調されました。
中国鉄鋼輸入の影響と地域産業の課題
ラテンアメリカ鉄鋼協会(Alacero)のホルヘ・ルイス・リベイロ・オリベラ会長は、過去15年間で中国からの完成品・半製品鋼の輸入量が233%増加したと指摘しました。これにより地域の製造業は閉鎖や価格低下、雇用損失に直面しています。中国政府の補助金や助成により、低価格の鉄鋼が市場を席巻し、地元生産者は競争力を失っています。
保護主義と地域統合の重要性
サミット参加者は、ラテンアメリカ各国政府による保護主義的措置と地域統合の必要性を強調しました。ブラジルのアルマンド・モンテイロ元開発・産業・外貿大臣は、地域内貿易の拡大が輸入制限の鍵になると指摘。具体例として、大西洋と太平洋を結ぶ南米のバイオシアニック回廊プロジェクトが挙げられ、物流改善とコスト削減を通じて地域産業の競争力向上を目指しています。
米国の関税措置とラテン市場への影響
メキシコ鉄鋼業界は、米国の中国向け関税をモデルとし、自国市場の保護を進めています。しかし、米国の50%関税(Section 232)の影響で、メキシコ国内市場は抑制され、2025年9月の完成品鋼消費量は前年同月比18.9%減の1,897万トンとなりました。アルカセロ関係者は、米国の関税措置が中国だけでなく、主要パートナー国にも影響する点に注意を促しています。
市場価格の動向
11月7日時点で、ラテンアメリカ主要港向け鋼熱間圧延コイルの輸入価格は1トンあたり500〜530ドル、ブラジル国内価格は3,500〜3,900レアルと報告されました。メキシコ国内の鉄筋価格も地域別に変動しており、輸入品と国内供給の双方に圧力がかかっています。
金属フォーカス 編集部コメント
ラテンアメリカ鉄鋼業界は、中国の低価格輸入による構造的圧力に直面しています。短期的には関税や保護措置が緩衝材となりますが、長期的には地域内生産・物流統合が不可欠です。政策と産業戦略の整合性が、地域鉄鋼市場の安定と競争力向上に直結するでしょう。


