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| EU zinc contract negotiations |
2026年の欧州向け亜鉛長期契約交渉は、予想よりも遅れて進行しています。市場関係者によれば、交渉はまだ始まっていない場合もあります。この遅延は、ロンドン金属取引所(LME)でのバックワーデーションが急激に進行していることが要因です。LME登録倉庫の亜鉛在庫は10月9日時点で22,850トンと、2023年2月以来の低水準に落ち込み、価格は3,000ドル/トンを上回りました。年初からの在庫減少は約75%、前年比では82%の減少です。
市場在庫減少とバックワーデーションの影響
在庫不足により市場は顕著なバックワーデーション状態に転じ、現物と3か月先価格のスプレッドは先月、約300ドル/トンまで急騰しました。最近では約130ドル/トンで取引され、入札・提示レンジは107.5~126.5ドル/トンです。この価格逆転は短期的な供給不足を示しており、買い手は将来価格やプレミアムを予測するのが困難な状況です。生産者は前方販売の契約締結に慎重で、消費者も供給確保の不確実性から購入を控えています。
製造業者(OEM)も発注を遅らせており、SHG(特級高品位)亜鉛の来年需要予測は不透明です。市場関係者は、現在の逼迫状況が継続するのか、産業消費動向の明確化により緩和されるのかを見極めるため、待機姿勢を取っています。一方で、国際鉛亜鉛研究グループは、2026年の精製亜鉛供給が需要を上回り、27万1,000トンの過剰となると予測しており、現行のバックワーデーションは持続しない可能性もあります。
長期契約価格と市場の今後
EUは1月~8月に674,426トンの亜鉛を輸入しており、前年同期比で5%減少しています。これは需要の鈍化を示唆します。多くの市場関係者は、2026年前半の供給を既に確保しているため、契約締結を急いでいません。また、顧客の購入意欲低下により、長期契約のボリュームも減少し、スポット購入の増加が来年の補完策となる見込みです。欧州市場では、長期プレミアムは220ドル/トン前後で落ち着くと予想されますが、一部の大手生産者は250ドル/トンを要求しており、買い手と生産者間の価格ギャップが交渉遅延の一因となっています。スポット価格との連動も見られ、11月17日時点のSHG亜鉛ロッテルダム倉庫プレミアムは230~260ドル/トンと評価されました。
米国市場でも同様の状況が進行しており、多くの2026年契約が未締結です。現時点でスポットおよび長期契約のプレミアムは18~21セント/ポンド(396~463ドル/トン)となっています。
金属フォーカス 編集部コメント
2026年欧州亜鉛長期契約は、在庫逼迫とバックワーデーションの影響で不透明感が強まっています。買い手・生産者双方が慎重姿勢を取る中、短期的な価格変動とスポット市場の動向が契約戦略に大きな影響を与えるでしょう。来年の需給バランスの変化次第で、長期契約プレミアムの設定にも調整が迫られる可能性があります。


