サウジアラビアのMaaden、LME週間で成長戦略を発表:鉱業の次世代をけん引へ

Maaden


トリプル拡張計画とグローバル展開で業界をリード

サウジアラビアの国営鉱山企業Maaden(マアーデン)は、2025年のロンドン金属取引所(LME)週間「サウジ・デー」において、今後の成長戦略とグローバル展開計画を明らかにしました。CEOのロバート・ウィルト氏は、「鉱業はマラソンではなく、連続するスプリントだ」と語り、Maadenが世界の鉱物供給網で重要な役割を果たす意志を強調しました。


探鉱・生産・ポートフォリオ:全方位で加速

Maadenはすでに世界最大規模の単一管轄内探鉱プログラムを保有していますが、ウィルト氏はこれを**「3倍に拡大」**すると宣言しました。また、の生産量は5年で倍増、長期的には3倍を目指すと明言。アルミニウム生産も同様に5年以内に倍増を計画しており、加えて希土類元素(レアアース)といった新たな鉱種にも参入する構えです。

同社の多角化戦略は、世界的な政治・経済の不確実性に対するヘッジとして機能しています。例えば、リン酸塩は農業用途で安定需要が見込まれ、アルミニウムはエネルギー転換やAI技術で重要性が高まります。そして金は不安定な市場環境で価値を保つ安全資産としての地位を確立しています。


エネルギー政策とテクノロジー:変革の鍵

Maadenはサウジアラビアの安価なエネルギーを活用したアルミニウム産業の成長を推進してきましたが、市場ベースの価格自由化に伴い課題も生じています。ウィルト氏は、「この緊張関係は健全であり、王国として達成すべき目標は明確だ」と述べました。

同氏はまた、テクノロジーと人材が成長のカギであると指摘。特に自動化やAIを活用した鉱山設計・操業の最適化が不可欠であり、Maadenの従業員数は倍増する見込みです。若年層(35歳以下)が人口の7割を占めるサウジアラビアにおいて、観光・エンタメ業界との人材獲得競争も激化しているとの見方を示しました。


Maadenの存在感強化と国際的信頼の構築

ウィルト氏は「私たちは時価総額で世界第4位の鉱業会社でありながら、まだ多くの人に認知されていない」と課題を指摘しました。国際鉱業評議会(ICMM)への加盟や、アストンマーティンF1チームのスポンサーシップを通じて、ブランド力と認知度の向上に取り組んでいます。

「子供たちが『パパ、あの車に乗ってる会社だよ』と言ったことがきっかけでMaadenに興味を持った幹部もいる」と語るように、同社は次世代の鉱業イメージ刷新にも力を入れています。これは単なるマーケティングではなく、世界の若者にとって「鉱業を再びクールにする」ための戦略的布石です。


金属フォーカス 編集部コメント

Maadenの拡張戦略は、サウジアラビアの国家戦略「Vision 2030」と連動し、世界の鉱物供給網の再構築に影響を与える可能性があります。特にレアアースや銅など戦略鉱物への新規参入は、中国依存を減らしたい各国にとっても注目の動きです。今後の探鉱成果とパートナーシップ展開に要注目です。


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