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| HKEx |
2024年のロンドン金属取引所(LME)週間では、金属市場の最新動向と地政学的な変化が鮮明になりました。特に、グリーンプライミアムの導入や中国の供給支配、銅の強気相場転換、アルミニウム市場の変化、そして希少金属の価格高騰が注目されています。この記事では、LME週間の重要な5つのポイントを解説し、投資家やメーカー、政策担当者が押さえるべき知見を提供します。
グリーンプライミアム導入と市場の持続可能性へのシフト
LMEの親会社である香港取引所(HKEx)は、ドバイに新子会社Commodity Pricing and Analysis Ltd(CPAL)を設立し、環境負荷の低いニッケルの取引価格をベースに「グリーンプライミアム」を設定する計画を発表しました。これは、メタルハブ(Metalshub)プラットフォームを通じた取引データを活用し、ニッケルのみならず銅やアルミニウムにも展開される見込みです。
この動きは、FastmarketsやS&P Global Plattsといった価格報告機関の役割に新風を吹き込み、持続可能な金属取引の基準を形成しようとしています。また、ドバイ拠点設立は中国と中東市場を結ぶ戦略的拠点としての意味合いも持ちます。
製錬所と鉱山の役割:製錬が鍵を握る
TrafiguraのCEOリチャード・ホルトム氏は、鉱石を埋蔵しているだけでは供給の安全保障は確保できないと指摘します。西側諸国が中国のガリウムやゲルマニウムの支配から脱却するには、製錬所の生産能力強化が不可欠です。
実際、オーストラリア政府はTrafiguraの製錬所2カ所の稼働維持に1億3500万豪ドルを支援。背景には、銅や亜鉛の製錬手数料低迷と中国の生産拡大による世界的なマージン圧迫があります。銅のスポット取引条件がマイナスとなる異常事態も発生し、日本、スペイン、韓国は銅原料市場の状況を懸念する共同声明を出しました。
銅市場の強気姿勢:価格上昇は必至
銅はLME週間のセミナーで最も価格上昇期待が高い金属に選ばれました。投資家の資金流入や需給のひっ迫、在庫の米国集中など複合要因が価格を押し上げています。
Wood Mackenzieは2035年までに世界の銅需要が24%増加すると予測し、特にデータセンター等の新興分野が価格変動を激化させる可能性を指摘。2026年以降の欧州市場向け生産者プレミアムも大幅に上昇し、チリのCodelcoやドイツのAurubisが高額のプレミアムを提示しています。これは米国の関税政策に起因するもので、供給保障のための追加コストが世界に波及しています。
アルミニウム市場の転換点:価格見通しの上方修正
コンサルタントのホルバ―・アルミニウム代表ホルヘ・バスケス氏は、これまでの弱気姿勢を一転させ、2025年にアルミ価格が1トンあたり3000ドル〜4000ドルに達すると予想します。
中国が製錬能力の拡大を抑制するなか、供給成長が需要に追いつかない懸念が台頭しているためです。これにより、アルミニウム市場の需給バランスと価格動向に新たな緊張感が生まれています。
希少金属ゲルマニウムの急騰:供給不足が深刻化
米国の特殊素材企業Indium Corpのグローバル金属販売責任者テオ・ルアス氏は、ゲルマニウムの供給が「存在しない」状況にあると発言しました。中国の輸出規制強化により価格は25年ぶりの高値に達し、購入困難な状況が続いています。
ゲルマニウムの現状は、他の希少金属やレアアースにも波及しうる課題であり、米中の貿易摩擦の焦点となっています。中国は最近、さらに5元素を輸出規制リストに加え、世界市場の不安定化を招いています。
金属フォーカス 編集部コメント
LME週間は、地政学的リスクや環境配慮の高まりにより、金属市場が大きく変化していることを示しました。特に製錬能力の強化とサプライチェーンの多様化が今後の鍵です。投資家や企業はこれらのトレンドを踏まえ、持続可能かつ安定した供給体制構築に注力すべきでしょう。


