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| U.S. Australia rare earths deal |
2025年10月、ドナルド・トランプ米大統領はオーストラリアのアンソニー・アルバニージ首相とともに、重要鉱物とレアアースの供給を強化するための協定に署名しました。これは、米国が中国からの依存を減らすことを目指す中で結ばれたもので、両国の経済および防衛協力を新たな次元へと引き上げることが期待されています。
重要鉱物とレアアースの供給拡大
トランプ大統領は、ホワイトハウスでの会議の中で「1年後には、重要鉱物とレアアースをこれほど多く手に入れることになるだろう」と述べ、オーストラリアとの協力の重要性を強調しました。この協定は、オーストラリアの鉱物処理能力を活用し、両国間の市場を守るための措置を講じることを目的としています。さらに、米国とオーストラリアは、価格下限などの不公平な貿易慣行に対抗するため、共通の貿易基準を採用することにも合意しました。
オーストラリアは、レアアースの世界第4位の埋蔵量を誇り、半導体、防衛技術、再生可能エネルギーなどの産業に不可欠な供給源として、米国とともに中国に依存しない供給網を確立しようとしています。オーストラリアに拠点を持つリナス・レアアース社は、現在、唯一中国以外で重希土類を生産している企業です。
重要鉱物プロジェクトと米国の資金支援
この協定では、米国とオーストラリアが初期プロジェクトに対してそれぞれ10億ドル以上を投じ、さらに日本を含む共同開発が予定されています。また、米国防総省は、オーストラリア西部で年間100トンの先進的なガリウム精製所の建設資金を支援すると報じられています。米国の輸出入銀行(Ex-Im Bank)は、重要鉱物プロジェクトに対して22億ドル以上の資金援助を行う予定です。
この協定は、オーストラリアの鉱物資源を活用し、米国の供給能力を強化する一方で、アジア太平洋地域における中国の影響力に対抗するための重要な一歩と位置づけられています。
防衛協力と新たな貿易協定
また、トランプ大統領とアルバニージ首相は、貿易や潜水艦などの軍事装備についても議論しました。特に、米国はオーストラリアに対し、バージニア級原子力潜水艦を2030年代初頭までに最大5隻提供する計画を進めており、これが両国の安全保障協定の柱となっています。オーストラリアは、この協定を通じて米国との防衛協力を一層強化し、中国の軍事的拡張に対抗しています。
一方で、オーストラリアは、貿易赤字を抱える米国に対して関税の軽減を求めているものの、トランプ大統領はオーストラリア製品に対して依然として高い関税を維持していると述べました。
金属フォーカス 編集部コメント
この協定は、米国とオーストラリアが重要鉱物とレアアースの供給確保に向けて進める重要な一歩です。特に、米中貿易戦争の影響で、これらの資源の戦略的確保が急務となる中で、オーストラリアが重要な供給源として注目されています。今後、レアアース市場はさらに活性化し、米国や日本との連携強化が求められるでしょう。


