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| Pensana MREC |
英国鉱山開発企業ペンサナ(Pensana)は、イーストヨークシャー州ハル近郊のレアアース精錬所計画を断念し、米国市場へ事業重点を移す方針を示しました。アフリカ・アンゴラのロンゴンジョ鉱山開発プロジェクトに注力し、2027年から年間2万トンの混合レアアース濃縮物(MREC)を生産予定です。ペンサナは英国での下流精錬能力開発を計画していましたが、米国政府による強力な支援が米国での事業展開に影響を与えています。
ソルトエンド精錬所計画中止の背景と米国シフトの理由
ペンサナは英国のソルトエンドケミカルパークで年産1万2500トンのレアアース酸化物および4400トンのNdPr酸化物を生産する予定でした。また、ヨークシャーエナジーパークにおける金属化プラントも計画していました。しかし、英国政府からの支援は約670万ドルにとどまり、プロジェクトは2025年前半までほぼ停滞していました。
一方、米国政府は2024年7月にレアアース大手MPマテリアルズへの4億ドル規模の支援とオフテイク契約を発表し、価格保障も付与しました。これにより、ペンサナは米国での精錬事業に事業資金と市場の魅力を感じ、米国政府との複数の協議を進めています。
米国市場の展望とペンサナの戦略
ペンサナは米国のレアアース産業の成長を見込み、MPマテリアルズとの取引をモデルにした同様の支援を期待しています。2025年6月には米国レアアース精錬企業リ・エレメント・テクノロジーズと、ロンゴンジョ産MREC年間2万トンのオフテイク契約を提案しています。さらに、ペンサナは米ナスダック上場を発表し、資金調達基盤を強化中です。
この動きは、米国が中国依存から脱却し、国内および西側諸国のレアアース供給体制を強化する戦略の一環です。中国は2024年10月に中・重レアアースの輸出規制を強化し、価格高騰を招いていますが、規制緩和があれば市場価格は急落するリスクも孕んでいます。
金属フォーカス 編集部コメント
ペンサナの米国シフトは、レアアース市場における地政学的再編を象徴します。英国の支援不足と米国の政策支援の差が企業戦略を左右し、世界的なサプライチェーン再構築が加速しています。今後の動向は、投資家や政策決定者にとって重要な示唆を含むでしょう。


