![]() |
Atacama Salt Flats |
チリの国営銅生産大手コデルコと、世界第2位のリチウム生産会社SQMが、アタカマ塩湖でのリチウム共同採掘に関する最終合意に近づいています。この提携は、ガブリエル・ボリッチ大統領のリチウム国家戦略に基づくものです。コデルコは、すべての戦略的な塩湖での操業を主導する役割を担います。この合意により、SQMはアタカマでの事業の過半数株式をコデルコに譲渡し、代わりに生産権を2060年まで延長します。この歴史的な提携は、コデルコが抱える銅生産の課題を克服し、重要鉱物市場へ参入する重要な一歩です。
鉱業大手の多角化戦略と課題
コデルコは現在、老朽化した鉱山での鉱石品位の低下や、予算超過と遅延が続く拡張プロジェクトにより、深刻な構造的課題に直面しています。同社の負債は、利払い・税金・減価償却費・償却前利益(EBITDA)の約6倍にまで増加しました。コデルコは、この提携を通じてリチウムという有望な市場に参入し、銅への依存度を減らすことを目指しています。加えて、SQMが持つ既存のインフラとノウハウを活用することで、コストを削減し、生産を加速させる見込みです。このリチウム事業への参入は、コデルコの収益源を多角化し、長期的な財務健全性を確保する貴重な機会となります。
国家戦略と経済的影響
チリ政府は、リチウム資源に対する国家の管理を強化したいと考えています。一方で、このコデルコとSQMの合意には批判も出ています。あるエコノミストは、この提携が「主権の放棄」につながると警告しました。SQMが将来的な収益の半分近くを維持することを指摘し、チリがリチウム資源を過小評価していると主張します。アルゼンチンでの事例と比較すると、この合意の経済的損失は「莫大」であるとの見解も示されています。しかし、この合意が成立すれば、チリはリチウム資源の監督を強化しながら、主要な民間企業を国内に維持することが可能になります。この提携は、コデルコにとって収益源の多角化、そしてチリ政府にとってリチウム国家戦略の実行を意味します。
金属フォーカス 編集部コメント
このコデルコとSQMの提携は、資源ナショナリズムとグローバル市場経済のバランスを象徴しています。チリ政府はリチウムを国家戦略鉱物と位置づけ、管理を強化しました。一方で、民間企業の技術と資本を取り込む現実的な選択をしました。この戦略は、リチウムという戦略的重要鉱物のサプライチェーンにおけるチリの地位を強化するでしょう。しかし、コデルコが銅からリチウムへと事業を多角化する過程は、今後の国家戦略と民間企業の連携モデルに重要な示唆を与えます。