![]() |
cobalt ev batteries |
世界のコバルト生産量の80%を占めるコンゴからの供給過剰と、電気自動車(EV)市場の需要減退が重なり、2025年初頭にはコバルト価格は歴史的な安値に沈みました。しかし、コンゴが4か月の輸出禁止措置を発表し、その後6月にも延長したことで、状況は一変しました。
価格回復と市場の動向
コンゴ民主共和国(DRC)の政策変更が引き金となり、EVバッテリーのサプライチェーンに入る硫酸コバルトの価格は年初から90%以上上昇しました。8月の平均価格は1トンあたり6,947ドルとなり、市場は再び活気を取り戻しています。これは、2022年のピークである1トンあたり19,000ドルにはまだ遠いものの、顕著な回復です。
トロントを拠点とする調査会社Adamass Intelligenceの最新データは、コバルト価格の急騰を裏付けています。8月にはEVバッテリー用コバルト市場の規模が1億8,010万ドルに達し、2022年12月以来の最高値を記録しました。これにより、EVバッテリーに含まれるコバルトの平均価値は、年初の1台あたり40ドル未満から70ドル以上に回復しています。
サプライチェーンのリスクと将来展望
ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)バッテリーからリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーへの移行が進む一方で、ニッケル含有量の多い正極材へのシフトもコバルトの使用に影響を与えています。それでも、8月のバッテリー金属バスケットの総額12.8億ドルの半分以上をニッケル、コバルト、マンガンが占めています。
世界のコバルト生産量でトップの中国企業CMOCは生産量を増やしている一方、世界第2位のグレンコアは、2025年末までにコバルトの 상당量が未販売となる可能性があると警告しました。これは、キンシャサが規制を緩和し、備蓄されたコバルトがサプライチェーンに再流入する時期によって、市場と価格への影響が大きく変わることを示しています。
金属フォーカス 編集部コメント
今回のコバルト価格の急騰は、特定の供給国に依存するサプライチェーンの脆弱性を改めて浮き彫りにしました。コンゴの政策変更が市場にこれほど大きな影響を与えた事実は、世界中のメーカーや投資家にとって無視できないリスクです。価格変動のリスクを管理するため、企業は長期的な供給契約や、リサイクル技術への投資をさらに強化する必要があります。