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ArcelorMittal HRC |
欧州大手鉄鋼メーカーのArcelorMittalは、熱延鋼板価格を再度引き上げました。第4四半期出荷分について、基準価格は610ユーロ/トンに設定されました。この決定は、欧州市場の需給バランス変化と、新たな規制の導入を背景としています。本記事では、この熱延鋼板価格上昇の要因と、今後の市場動向について専門的な視点から分析します。
価格上昇の背景:EUの輸入規制と需要回復の期待
今回の熱延鋼板価格引き上げには、複数の要因が複合的に作用しています。まず、欧州委員会が提案した新たな保護メカニズムが挙げられます。このメカニズムは、輸入割り当ての削減や反ダンピング関税の強化を目的としています。この規制は2026年1月に発効する可能性があります。加えて、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の導入も価格に影響を与えています。炭素排出量が多い輸入品はコスト増となります。結果として、アジアからの輸入鉄鋼の魅力が低下する見通しです。
市場の動向:先物市場の動向と需要の回復
ArcelorMittalの価格引き上げに先立ち、先物市場では既に価格上昇を織り込んでいました。北欧市場の熱延鋼板の12月渡しの価格は、608ユーロ/トンで取引されていました。夏季の活動低下で価格が下落した反動もあり、市場は夏休み明けの需要回復に期待しています。また、米国との貿易協定を背景に、ドイツで需要が回復するとの見方も出ています。これらの動きが、価格上昇を正当化する要因となっています。
金属フォーカス 編集部コメント
ArcelorMittalによる熱延鋼板価格の引き上げは、単なる個別企業の動向ではありません。これは、EUの新たな輸入規制やCBAMといった政策が、欧州域内の鉄鋼市場の構造を根本的に変えつつある明確な兆候です。これらの政策は、高炭素排出国のサプライヤーを排除し、域内メーカーの競争力を強化します。今後、グローバルな鉄鋼サプライチェーンは再構築を迫られるでしょう。