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Australian zinc and lead smelters |
オーストラリア連邦政府は、亜鉛・鉛製錬所の救済策として、8,700万ドル(約135億円)の資金を投入します。この支援パッケージは、タスマニア州と南オーストラリア州との共同出資で実施されます。目的は、亜鉛・鉛製錬所を近代的施設へ転換し、重要鉱物の生産拠点として再構築することです。
今回の措置は、世界的金属グループのNyrstarが、価格下落による操業難を理由に製錬所の閉鎖を示唆したことを受けています。対象となるのは、タスマニア州の年間生産能力28万トンのホバート製錬所と、南オーストラリア州ポートピリー市の年間16万トンの鉛製錬所です。連邦政府は5,750万ドルを拠出し、南オーストラリア州政府が5,500万ドル、タスマニア州政府が2,250万ドルをそれぞれ出資します。
この資金は、製錬所の再建・近代化に向けたエンジニアリング計画とフィージビリティスタディに活用されます。特に、ポートピリー製錬所では、アンチモンの試験プラントが建設されます。これが成功すれば、オーストラリアで唯一のアンチモン金属生産拠点となります。中国でのアンチモン需要は太陽光発電用ガラス産業で高まっています。しかし、太陽光発電用ガラス価格が下落し、中国国内の生産者が減産に踏み切っています。
金属フォーカス 編集部コメント
オーストラリア政府の今回の決定は、単なる既存産業の保護策に留まりません。それは、戦略的な重要鉱物サプライチェーンの構築に向けた明確な政策転換です。亜鉛・鉛市場の低迷を機に、アンチモンなどの新興鉱物生産にシフトすることで、国内の産業基盤を強化しようとしています。この動きは、中国への依存度を減らし、世界の重要鉱物市場における新たなプレイヤーとしての地位を確立する可能性を秘めています。今後の技術開発と市場動向が、この戦略の成否を握る鍵となるでしょう。